12. 想いに正直に

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「初めの頃は、思っていることを何でも言えてた。ずっと憧れてたことも、取材をさせてほしい理由も全部。気持ち悪がられても引かれてもいいって、伝えたいことは伝えないとと思ってたけど」 でも、今はそれがまったくできない。 いつからだろう? この一言でどう思われるだろうか?忙しい新堂さんの手を煩わせてしまうだろうか?嫌われるかな、呆れられるかな? 何かをするにも話すにも、そんなことばかり考えてしまって何も言えなくなってしまった。 (なんでだろう、こんなに好きなのに) 『お前が好きなのは、デザイナーとしての新堂梓真なの?』 違う。デザイナーとしてだけじゃない。 私の感性を褒めて励ましてくれたり、風邪を引いたと聞いて駆けつけてくれたり、ちょっと子どもっぽく拗ねたり、そんないろんな新堂さんが好きだった。 他の人のところになんていってほしくない。 でももう、切れてしまった糸の直し方が分からない。 「…切れたわけじゃないだろ。こんがらがりすぎて、どこからどう解いていけばいいのか分かってないだけじゃん。お互いにさ。だったら、一つ一つ解いていくしかないんじゃないの?」 そう言って、有働くんは私に持っていたカメラを渡してくれた。 「新堂さんの話してるときの櫻井、良い顔してる」 ほら、と見せられた液晶画面には、さっきアパレルショップの前で有働くんに撮られた私のーー満面の笑顔が写っていた。
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