新堂さんと恋の糸

12. 想いに正直に

◇◇◇◇

有働くんに背中を押されたものの、最後の勇気が出ないまま数日が過ぎた。

というのも、新堂さんが何ヶ月も前から準備していた個展の開催がいよいよ間近に迫っていて、一番忙しく大事なときに連絡をするのは気が引けたからだ。

有働くんが聞いたらそんなこと気にするなと言われてしまいそうだけれど、自分の行動が新堂さんを煩わせてしまうかもしれないと思うと、やっぱり二の足を踏んでしまう。

この期に及んで少しでもよく思われたい自分に呆れつつ、何気なく手帳を開いてみると、前に新堂さんにもらったレセプションの招待状が挟まったままだった。

『今度の個展、一般公開前に招待客向けのレセプションがあるからその招待状。忘れないうちに渡しておく』

『いいんですか！？』

『連載の最後は個展の特集なんだろ？来てもらわないと困る』

そう言ってくれていたけれど、次号の担当は杳子さんに変わってしまったから、きっと杳子さんが招待されているのだろう。

―――行きたかったけど、行けるはずがない。

新堂さんが描いていた会場デザインがどう実現されているのか見てみたいけれど、もし現地でこの間みたいに鉢合わせしたら。

新堂さんと考えたあのデザインの会場内で、新堂さんと杳子さんが二人で一緒にいるところをこの目で見てしまったら、さすがにダメージが大きすぎる。

（一般公開が始まったら、チケットを取って一人で行こうかな…）

そして、個展が終わってすべてが落ち着いてから、新堂さんに連絡しようかと考えていた。