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◇◇◇◇
「まずは今日もお疲れ、かんぱーい!」
ガヤガヤとした店内で、ビールが入ったジョッキが合わさる小気味よい音がする。
この場にいるそれぞれが仕事終わりの一杯目を堪能すると、どこからともなく「あぁー」と気の抜けた声が聞こえた。
「そして櫻井さんは第一関門突破おめでとう!」
その日の定時後、編集長のお誘いで私は行きつけの中華料理屋に来ていた。
編集長の園田美紀さんが一気に半分ほど飲み干してドンッとテーブルに置くと、ニコニコと笑いながら私の肩を叩く。
「いえ、首の皮一枚繋がった状態というか…取材OKがもらえたわけではないので」
「次に繋がっただけでも十分よ!ねえ?」
現在編集部にいるのは、園田編集長をトップとして合計10人。社内の中では小規模の編集部だ。
けれどその分結束力は強く、誰かの声掛けでこうして飲みに行ったりプライベートで連絡を取り合うことも多い。
仕事柄外回りも多いので全員が揃うことは少ないけれど、いつもこうして半分くらいは集まっていた。
「でも代わりに泉ちゃんが事務所の雑用をしろって、めちゃくちゃな条件じゃありません?まだ取材もどうなるか分からないのに」
綺麗な眉をひそめ難しい顔で考え込んでいるのが、私の直属の上司である麻生杳子主任。
ショートカットでマニッシュ雰囲気の杳子さんは、元ファッション雑誌の編集部にいただけあってとてもおしゃれだ。
今年この編集部に転属してきたときから気さくにいろんなことを教えてくれる頼れる先輩で、今ではプライベートで遊びに行ったりもして『杳子さん』『泉ちゃん』と呼び合う仲でもある。
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