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「今？家でごはんの用意してる…」
「…ってことは、今日行ってないんだ？」
玲央くんの質問は、今日のレセプションのことだろう。
私の沈黙を肯定と捉えたようで、電話の向こうで溜息が聞こえる。
「あの、玲央くんも知ってますよね？私もう担当から外れたんです」
「知ってる。ポメ子さん俺のこと庇ってくれたんでしょ？ほんとお人よしだよね。全部俺のせいにしておけばいいのに」
やっぱり、記事の流出やその後のことも玲央くんも全部知っているんだ。そんなことできないよ、という私の返事にまた小さく溜息をつかれたのが分かる。
「あの、どうかしたんですか？」
「うーん……実は新堂さんのことなんだけど、ちょっと大変なことになってて」
溜息のあとに聞こえてきた、声をひそめるような深刻なトーンに私は心臓がどきりとする―――新堂さんに何かあったのだろうか？
「ここ最近、事務所に全然来てないんだ。オファーも全部断ってるし、昨日久しぶりに連絡ついたときも本人は『何ともない』って言ってたけどすっごい体調も悪そうで…
たぶん家とギャラリーの往復でロクに寝てないし食べてもいないんじゃないかな。相当無理してると思う」
玲央くんの話に、心臓の音が早鐘のように自分の耳に伝わるのを感じる。
（確かに私がまだ事務所に出入りしているときから、トラブルとかもあったみたいだし忙しくしていたけど…）
よく考えれば、私の連絡先を知らない玲央くんがこうしてわざわざ電話をしてきたということ自体が、それだけ深刻な状況なのかもしれなかった。
「だからさ、もしポメ子さんがレセプションに行ってるんだったら様子を聞こうと思ったんだよね。でもそっかぁ、行ってないんだ？」
あからさまにがっかりした調子に、私は何て答えたらいいのか分からない。
「ねえポメ子さん、今からでも様子見に行ってくれない？」
「……えっ！？」
い、今から…？？
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