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玲央くんとの電話を切ってから改めて招待状を確認すると、閉館時間は17時だった。
私は会場までのルートを大急ぎで調べて超特急で準備をして家を出ると、一番早い電車に飛び乗る。
玲央くんの言っている意味が全部理解できたわけではないけれど、何よりも新堂さんの様子が気がかりだった。
乗り換えも会場の最寄駅からの道も、少しでも時間が短縮できるように走りながら、前に新堂さんと水族館で待ち合わせしたときもこんなふうに慌てていたことを思い出す。
(あのときから全然成長してないな…私)
走りながら時計を見ると、閉館時間の20分前。
前方に会場であるギャラリーが見えてくる。
駐車場にはほとんど車もとまっておらず、人もほとんどいない。
レセプション自体は終わってしまっているようだ。
それでも、入口を見るとまだ閉まっていないことが確認できて、私はひとまず胸を撫で下ろした。
少し息を整えてからバッグから取り出した招待状を、会場の入り口に立っているスーツ姿の男性に見せる。
「閉館まであと20分少々ですが、よろしいですか?」
「あ、はいすみません、大丈夫ですっ」
「遅すぎる」
「………え?」
突然口調が打って変わった受付の人にびっくりして顔を上げると―――受付係だと思っていたその人は、新堂さんだった。
「もう来ないかと思った」
「新堂さん…っ?なんで、」
確かに、新堂さんが心配で会いに来た。
けれどこんな形で遭遇するとはまったく想像していなくて、私はただただ呆然と穴が開くくらいにその顔を見つめる。
「案内するから、行くぞ」
「…え、あ、あの、」
言いたいこと、聞きたいことがたくさんあった。
でもそのすべてが、新堂さんを目の前にすると霧散してしまって、私はただその後ろ姿のあとをついていくしかなかった。
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