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「それからこの辺りとかは、なるべく多くの人が見やすいようにできないかと思って、展示方法も変えてみた」
新堂さんが示した展示スペースは、白い腰壁で作品が囲われていた。
その壁には高いところや低いところにいくつか小窓が作られていて、そこからまるで水槽の中を覗くみたい作品を覗き込む展示方法。
背が高い人や低い人、子どもなども同じように見られるようになっているだけでない。
四方のどこからでも小窓を覗けるという珍しさに興味を持った人々が、一箇所に滞留せずに流れが生まれるようになっている。
(水族館で見たことや話したアイデアが、いろんなところに取り入れられてるんだ…)
私はそのことが嬉しくて、一つ一つ魅入ってしまう。
「…お客様、閉館まであと10分しかないのでお急ぎください」
「えっ…!?あ、はい!」
また受付係の口調に戻って、少し先を行く新堂さんが冗談めかして私を呼ぶ。
そのとき私は自分がここに来たそもそもの理由を思い出して、前を歩く背中に向かって尋ねた。
「新堂さんっ、体調はもう大丈夫なんですか?」
ぱっと見は痩せたりといった印象はないけれど、顔色は会場照明の関係ではっきりとしたことは分からない。
「体調?」
「ちゃんとごはん食べてますか?寝れてますか?事務所にも全然行ってないって聞いて、」
「事務所なら昨日も行ったし、玲央とも話したけど?」
何の話だ?という顔を見て、私はようやく玲央くんに謀られたのだと気づいた。
きっと、こうでもしないと私が行かないって分かってたから。
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