新堂さんと恋の糸

13. Beautiful 'Spring'

個展の展示は、1階から始まって地下1階へと螺旋階段で下りていく。

「新堂さん！あそこにあるのって賞を取った…」

「あぁ、美術館から借りられなかったからレプリカだけどな」

私が初めて心を奪われた、スチール製のチェアだ。
階段を下りる途中から見えたそれに思わず身を乗り出すと、危ないぞと窘められる。

1階は有名ブランドとのコラボや商品化されたプロダクト、レストランや商業施設などの空間デザインなどのいわゆるメジャー作品がメイン。

一方で階段を下りた先の地下1階は、新堂さんがコレクションで発表した作品や学生時代の制作物、未発表作などが展示されていて、新堂さんのデザイナーとしての原点や特徴的な作品へと変化していく。

まるで、新堂さんの思考の奥底に誘導されていくみたいだなと思う。

地下1階から吹き抜けの天井を見上げると、本当に海の底に到達したみたいな錯覚に陥った。