13. Beautiful 'Spring'

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――もう、そこで駄目だった。 ここまでどうにか堪えていた涙がその一言で決壊したかのように零れ落ちていく。 その後はもう、次から次へととめどなく頬を伝うのを止められなかった。 「櫻井って、よく転ぶしよく泣くよな」 そう言った新堂さんの顔が笑っているのか呆れているのかさえ、涙で滲んだ視界では分からない。 それでも、新堂さんの右手が私の右頬に触れて流れる涙を拭ってくれる。 「だって新堂さん、もうインテリアのデザインはしないって…」 「そうだよ、作るつもりなんかなかった。しかもこんなデザインと材質にしたせいで手間も時間もかかるし、おまけに商品化もできないから1銭にもならないしな」 「それならどうして、」 ぐいぐいと頬を拭う力が強くなってきて私が顔を歪めると、また少し力を緩めて柔らかく笑う。 「デザインをしている時間が、楽しかったから。 どういうものだったら櫻井が驚くだろうかとか喜ぶだろうかとか…そういうことを考えていたら全然苦じゃなかった。 櫻井が無償だろうが何だろうが、事務所で楽しそうに雑用をしていた理由がやっと分かった」 頬を撫でる手が、言葉が、眼差し一つ一つが優しい。 どうして。 どうして。 「ならどうして…担当を代えろって言ったんですか…?」 私が発した言葉は、水に投げ込まれた小石みたいに波紋を起こした。 新堂さんの動きが止まって、途端に私たちの間に流れる空気が張り詰める。 「それは…見られたから」 (……見られた?) 新堂さんは私が座っているハンギングチェアの後ろに回って、何かを取って戻ってきた。 そして、私の目の前に差し出されたのは1枚のデザイン画だった。 ハンギングチェアのもので、デザイン画には作品名の『Beautiful 'Spring'』の文字と、椅子には女性が座っている。 「これは……私?」 そのデザイン画の女性の顔は――私にそっくりに描かれていた。
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