3. その呼び方はやめてください

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足元にたくさん積まれた段ボールや壁面の本棚には、無造作に押し込まれた本や分厚いカタログの山。 そして床には、これまたたくさん紙が足の踏み場もないほど散乱している。 「……えっと、ここは一体?」 うまくパーティションで隠されているけれど、この一角だけは先ほどまでの洗練されたオフィスと同じだと思えないほどの散らかりぶりに、私は唖然としてしまった。 「一応これでも片付けてはいるんだが、それが追いつかないくらい物が増えるんだよな。とりあえずこのスペースに一旦全部置くから全然片付かない」 「それはたぶん一番片付かないパターンですね……」 私はどうにかデスクの上の物をどかして、そこにバッグを置く。 「ここでやってもらいたい作業は主に三つ。 棚の整理、ボツ案のシュレッダーかけ、カタログなどの処分、以上だ。簡単だろ?」 確かにそれだけ聞くととても簡単そうなのだけれど、とにかくその量がハンパなさすぎる。まずどこから手をつけたらいいのかさえ分からない。 「あとは備品のチェックと補充。ここにいる間の配達や郵便物の受け取り。それから帰る前に軽く掃除も」 「全然三つじゃなくないですか!?」 (なんか、体よく使われてない私…!?) いろいろ言いたい言葉を、私は何とか飲み込む。 少し顔に出ていたかもしれないけれど。 私がこのオフィスで作業する時間は基本15時から17時。 これも新堂さんから指定で、どうしても突発的な理由で変更になる場合は必ず事前連絡を入れるよう約束させられた。 「じゃあ今日からよろしく、雑用係」 「その呼び方はやめてくださいっ!」 ニヤリと笑って自席へと戻っていく新堂さんの背中を見送ると、目の前の膨大な量の本と書類の山に対峙する。 「…もうこうなったら、何が何でも絶対取材OKって言わせてみせるんだから…!」 こうして私の、新堂さんの事務所での雑用係としての日々が始まってしまった。
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