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「レシート出しといて、後で払う」
「そんなのいいですよ。これ100均で買ったので全然高いものじゃないですし」
これは私が勝手にしたことだし、それで少しでも使いやすくなったと思ってもらえたのなら、それだけで私にとってはお値段以上の価値がある。
認めてもらえたとまでは言い過ぎかもしれないけれど、それでも自分のアイデアを褒められたようで嬉しかった。
「変なやつ」
「んふふ」
自然と顔が綻ぶのを隠せない私に、新堂さんがぽんと何かを頭に載せた。
「それ、シュレッダーにかけといて」
慌ててそれを受け取ると、クリアファイルの中にはたくさんのデザイン画が入っている。
「これ全部廃棄でいいんですか?」
「そう、さっきの打ち合わせで全部却下になったから」
新堂さんは事もなげに言うと、デスクの上にある段ボールの中を覗く。
その中には私がシュレッダーにかけるのを後回しにしていた、ボツ案のデザイン画がすべて入っている。
「なんだ、これまだ捨ててなかったのか」
「はい…あの、毎回こんなに?」
「そうだな、毎週プレゼンが2、3回あって毎回最低5、案件内容によってはその倍は出す。1回でハマるのが当たればいいけど、ほとんどは候補を残しつつ『もっと他の案もほしい』となる」
そう言って、新堂さんは段ボールの中から一番上の1枚を手に取った。
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