1. 助けてくれたのは

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「で、どうすんの?よく見たら右膝はストッキングも破れてるし、その格好のまま『奇跡の人』に会いに行くわけ?」 「えっ、あぁっ!?」 指摘されて確認すると右膝のストッキングが破れていて、おまけに踵まで伝線している。 冷静に見ると、確かにひどい。 目の前の男性は口元を私の名刺で押さえているけれど、あれは笑いを堪えている顔だ。サラサラの前髪の下から覗く目が笑っている。私は遅れて恥ずかしさに襲われて、俯くしかなかった。 幸いポーチの中にストッキングの替えはあるけれど、絆創膏がない。この前、靴ずれの応急処置で使ってから補充するのを忘れていた。 (困った、どうしよう…) ここからコンビニか薬局を探して絆創膏を買って、ストッキングを履き替えて…はたして時間はどれくらいかかるだろう。 頭の中で計算するけれど、悩んでいる時間も惜しい。 うじうじ悩んでいたって仕方ない、とにかく急がないと! 「あの、助けていただいてありがとうございました、私もう行きますっ」 もう一度お礼を言ってから立ちあがって体重をかけると、倒れ込んだ衝撃で打った右膝と腰に痛みが走って思わず顔が歪む。
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