5001人が本棚に入れています
本棚に追加
「……っ、」
「ほら、言ったそばから」
私は咄嗟にブロック塀に手をつく。
捻挫とかはしていないと思うけれど、これはゆっくりしか歩けないかもしれない。
時計を確認すると、約束の時間まであと20分と迫っていた。
今から遅れることを連絡しないと。でも、忙しい中時間を割いてもらったのに、事情を説明したとしても遅れると聞いて会ってもらえるだろうか。
(どうしよう、ここまできたのに…)
私は俯くと、無意識のうちに唇を噛んでいたことに気がつく。
「はぁ…おい、左手貸せ」
「……え?」
男性は突然しゃがみ込んだかと思うと、そう言った。
意図が分からず戸惑っている時間も惜しいのか、右手で私の左手首を掴むと彼の肩に置くよう促される。
「打ち合わせの場所って、この先のセントラルタワービルだよな」
どうして知ってるんだろう。
そんな私の疑問も、次の予想外の行動にすべて吹き飛んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!