1. 助けてくれたのは

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そのまま彼の右手が私の背に回ったと同時に左腕が膝裏に入ると、私を横抱きにして持ち上げられた。 あまりにもあっけなく目線が同じになって、私は声も出ない。 (だめ、こんなの心臓がもたない…!!) 眼鏡でも隠しきれていない端正で整った顔が眼前に迫ってきて、その衝撃と動揺で私は心臓が爆発しそうなほどバクバクしている。 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!?」 「何?その引きずった足じゃ時間内に着かないと思うけど」 「そ、それはそうですけど、」 すれ違う人がみんな振り返っているし「何あれ?」とか「何かの撮影?」みたいな声も聞こえる。さっきの遠巻きに見る視線も痛かったけれど、今は逆に目立ちすぎて恥ずかしい。 「で、でも、みんな見てますっ、」 「周りの目より、自分のケガの心配でもしたら?」 私の抗議や周囲の目。 そんなことには気にもとめずに、そのまま歩き出してしまう。 「打ち合わせに間に合いたいんだったら大人しくしてろ。舌噛んでも知らないぞ」
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