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そのまま彼の右手が私の背に回ったと同時に左腕が膝裏に入ると、私を横抱きにして持ち上げられた。
あまりにもあっけなく目線が同じになって、私は声も出ない。
(だめ、こんなの心臓がもたない…!!)
眼鏡でも隠しきれていない端正で整った顔が眼前に迫ってきて、その衝撃と動揺で私は心臓が爆発しそうなほどバクバクしている。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!?」
「何?その引きずった足じゃ時間内に着かないと思うけど」
「そ、それはそうですけど、」
すれ違う人がみんな振り返っているし「何あれ?」とか「何かの撮影?」みたいな声も聞こえる。さっきの遠巻きに見る視線も痛かったけれど、今は逆に目立ちすぎて恥ずかしい。
「で、でも、みんな見てますっ、」
「周りの目より、自分のケガの心配でもしたら?」
私の抗議や周囲の目。
そんなことには気にもとめずに、そのまま歩き出してしまう。
「打ち合わせに間に合いたいんだったら大人しくしてろ。舌噛んでも知らないぞ」
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