1. 助けてくれたのは

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そうして、結局私は目的地であるセントラルタワービルのエントランスに、抱きかかえられた状態で到着した。 「今何時?」 「えっと、9時20分です」 「ちょうど10分前到着だな、さすが俺」 そう言って男性は得意げに笑うと「会議室は15階だったよな」と私に聞いた。 ここは複数の企業のオフィスが入っているビルで、そのうち14~15階は貸し会議室スペースになっている。先方に指定されたのがここの15階の会議室だった。 (あれ、私この人に15階だって話したっけ?) そのままビルの中へ入って、受付へ向かおうとしたのでさすがに慌てる。 この状況に流されかけていたけれど、このまま受付に行くなんて恥ずかしいし、そもそもこの男性は部外者だ。 「あの、もうここまでで十分ですから…!それに関係者以外はこれ以上入れませんし!」 「はぁ、まだ気づかないわけ?鈍感というか」 「え?」 どういうこと?―――呆れたような目で見られて、私は頭の中がハテナマークでいっぱいになる。 そんな私のことなどお構いなしに受付へと進むと、衝撃的な一言を発した。 「すみません、9時半から15階の第3会議室を予約している新堂ですけど」 ―――え、今なんて…?!!?
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