1. 助けてくれたのは

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「お待ちしておりました。そちらはお連れ様…でよろしいでしょうか?」 「は、はい。文董社の櫻井と申します」 「新堂様と櫻井様ですね。こちらが来客用の入館証となります。お帰りの際はまた受付へご返却ください」 そうして受付の女性から入館証を渡される。 「どこかで絆創膏と消毒液って借りられます?この人見ての通りケガしてて」 「はい、あちらのゲートを通ってエレベーターホールの先に医務室がありますので、そちらに一通りのものが揃っております。産業医が常駐しておりますのでお声がけください」 「分かりました。じゃあ先にそっちに行くか」 そう聞かれるけれど、正直私はそれどころではない。 私は目を丸くして眼前の男性の顔を呆然と見つめてしまう。 「嘘……、本当に、新堂梓真さん…?」 「やっと気づいた?そう、俺が泣くほど会いたかった打ち合わせ相手」 「!?な、泣いてはいませんっ…!」 「嘘つけ、半泣きだったくせに」 そう指摘されてぐっと詰まる。 確かに間に合わないと少しパニックになりかけてたのは本当だけど。 それから、教えてもらった通りにエレベーターホールの先に進むと『総合医務センター』の看板が見えた。 医務室には、白衣を着た女性がいて、私の様子を見ると一目で状況を察してくれた。 「ごめんなさいね、一応記録のためにこれに記入してもらえるかしら?」 簡易ベッドへと案内された私は、問診票を受け取る。
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