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1. 助けてくれたのは
普段使わない路線の電車や地下鉄に乗るとき、ちゃんと目的地に着くまでの間はそわそわと落ち着かない。
運よく座席に座れたとしてもウトウトなんてできないし、何度も車内路線図を見ながら「目的地まで何駅…」と確認してしまう。特にそれが大事な仕事の打ち合わせの日だとなおさらだ。
『次は、――駅です。お降りの方は…』
目的の駅に着いた。時計を見て時間通りに着いたことにまずは一安心。
事前に調べた通りに上りエスカレーター付近の車両に乗ったので、行列を待つことなく出口へと向かう。
「えっと、B3出口を出て大通りまでまっすぐだから…」
地下道からオフィス街の真ん中へと這い出た私は、駅の案内図とスマートフォンの地図を見比べながら、行き先までの道順を念入りに確認する。
都内の出版社に就職して3年目。
今年の春に、就活中から希望していたデザイン雑誌『D.design』の編集部に転属された私には、一つの夢があった。
それは、『新堂梓真』という憧れのプロダクトデザイナーを取材して、その特集記事を書くこと。
大学在学時に渡欧して某有名デザイナーに弟子入り。
彼のコレクションで発表された作品が、世界的なコンペティションの新人賞に輝いたのが弱冠21歳のとき。
輝かしい経歴の持ち主ながら、帰国してからも日本で事務所を設立してからも取材のたぐいは徹底的に断っていて『取材嫌い』で有名でもある。
クライアントへの要求もその点は徹底しているようで、多くのデザインを発表しながらもその為人や仕事ぶりはベールに包まれた人だ。
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