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高校二年で転校した学校で、いくつかの出会いがあった。持ち前のフレンドリーさと巧みな話術を得意とするおれは、クラスの男子とも女子ともケラケラ笑い、冗談を言い合ったり、遊んだり出来る。黙っていてもいつの間にか誰かが側に寄ってきて、他愛もない話をして去っていく。俺の周りは常に騒がしく、楽しげな雰囲気だった。
同じクラスに物静かな男子がいて、まだ話した事がなかったなと気になった瞬間、おれはそいつの席の前の席から椅子を借り、話しかけた。これが卒業して今でもつるんでいる友達、いや……親友。
ほんとは、大好きなおれの……宝物。
二つ目の出会いは、その大好きな親友が恋をしていた女の子。結果としてその恋は実らなくて、おれはその子から親友を奪っていた。もしかしたら、譲り受けたとも言えるかもしれない。認めないけど。
三つ目の出会いは、高校三年で転校してきたイケメン。身長は高く、脱げば筋肉質、茶髪は一見チャラく見えるが、人懐こそうな表情は、周囲を囲む同級生達の話にころころ変わって忙しい。女子にも男子にも人気で、いつでも引っ張りだこだ。俺も転校してしばらくはあんな感じだったけど、今ではおれにフリーな時間が出来るくらい。
お陰様で、大好きな親友との時間を満喫できてありがたい。そのイケメンとも俺は仲良く付き合っていくうちに……気付いてしまった。
誰にも人気者なイケメンがおれの宝物を見ている事に。
物欲しそうな眼差しを、おれのモノに向けている事に。
まだそれが、なんという感情なのか、知りもせずに。
おれと、宝物と、イケメンの付き合いは、途切れる事なく続いている。卒業してから宝物とイケメンが一緒に暮らせるように計らったのはおれだし、何かと協力してきた。
特にイケメンの方は困ったものだった。男同士の恋愛についての知識がまるでなく、女の子相手でもキス以上を知らない純粋さ。あまりにピュアだったから、おれもあれやこれやと手を焼いたものだ。やりすぎて喧嘩したし殴られたし、おれも諦めきれない宝物にすがったりしたけど、まあ、見守っててやるよ。
とはいえ、隙があればかっさらうけど。
という訳で、ほんのりと夜に色づく夕方の町を、ふらふらと歩いていく。夕飯時にお邪魔して、ご馳走になりつつ二人の邪魔してやろうと企む。二階建てのちょっと古くさいアパートが見えてくると、自然と足早になっていた。
「さむさむっ。まだ寒いなぁ。あったかい豚汁とか食べたいなぁ」
豚バラ肉たっぷり、じゃがいも大根にんじん、長ネギきのこがたっぷりの、ほかほかのみそ味でー……と考えているといっそうおなかが空いてきた。
三月に入っても仕舞う事ができないダウンジャケットのポケットに両手を突っ込む。何度も遊びに来た部屋の、安っぽいインターホンを押すと、部屋の中から物音がしてドアが開いた。
「……はい。あれ、早坂」
「やっほ、伊万里。腹減ったからなんか食わして?」
鉄壁の無表情、俺のかわいい宝物。伊万里は、ほんの僅かにその真っ黒な瞳を大きくしていた。
「いいけど、連絡なしに来るの珍しいね」
「その顔が見たかったからね」
何言ってんの、といつもの顔に戻った伊万里は、さらにドアを開けておれを招き入れた。
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