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もみの木の章 1年後
━━━転生した日、あれから一年が経った。
朝起きたらHPとMPが2に上がっている。
俺は狼に育てられた狼ベイビーになった。
最近2歩歩いただけで皆に誉めてもらえる喉かな日々を過ごしているんだー。だからたとえそれが自分の子供みたいに咥えて運ぼうとして、首から血が吹き出したあの日の事なんて、もう恨んでいないよ。毎日美味しい乳をありがとう。だから感謝と共に毛皮にう〇ちしちゃっても恨まないでおくれ。
『そうか……わざとだったのか……』
『ハハハ、ジョークだよジョーク、赤ちゃんの体ってうまく制御できないんだよなー』
『フン、あとで優しく咥えて運んでやろう』
ビク!
『ハハハ、ジョークってやつさ、さて体を洗いに外に出掛けるか、そろそろルクスも外に出てみるかい?』
『いいのか?よっしゃー!やっと外に出る日が来たか』
俺の視力は近くのものなら見えるようになったのだ。少し遠くもぼんやり見える。そう、灰色のしわしわの顔をした鷲鼻にボーボーの髪で目を隠した爺さんの顔も、覗いてきて俺を抱き抱え、風ノ不死狼ダークガルムことガルさんの背に乗せた、白髪を束ねた団子っ鼻でくりりとして少し意地悪そうな目をキラキラ輝かした、同じくしわしわ顔のばーさんの顔もわかるようになったんだ。ホビットってこんな姿だったかなー?ゴブリンとのハーフっぽい容姿に見えなくもなかったがまあどっちでもいいか、爺さんは爺さん、婆さんは婆さんなのだ。
爺さんが扉を開けてくれたので、揺れる背にしっかりとしがみつきながら外へ出た。
「キャッキャッキャー」
笑いが止まらん、太陽の光が眩しい、目が慣れてくると黒っぽい灰色の毛が風に揺れていた。最初は真っ黒だったのに綺麗な水で体を洗っていたらだんだんとこんな色になったんだっけなー。ガルさんは太陽の力かもっていってたけどね。
『ついたぞ』
屈んだようで、婆さんに抱っこされるとガルさんは水辺で体を洗いに行った。
爺さんと婆さんで交代交代に抱っこされてるとガルさんが戻ってきて、匂いを嗅いできたので鼻に触れて話しかけた。
『そうだガルさん、今日も目の治療試してみよ?』
『そいかい、もうこれ以上良くならないからもういいけどねー』
『今日はいける気がするんだ。目を近づけて』
『フフ、好きにしな』
あれから毎日光魔法かけていたが結局初日より視力はよくならなかったのだ。
だが今日は違う、MP2分の魔力を手に集めた。いつもより強い魔力を感じる。放つといつもより倍くらいの小さな光が出たではないか!光はガルさんの目を包むように癒していく。
『おお見える!見えるぞルスク、近くのものしか見えんが、ぼんやりとだけどルクスも婆さんもついでに爺さんの顔もなんとなく見えるぞ!』
『ついでかよ!良かったのう、目の曇りも少し良くなったんじゃかいか?』
『そうか、それはよかった。でかしたルクス礼をゆうよ』
「キャッキャ」
『どういたしまして』
産まれて以来に外に出た日、ガルさんの視力も久々に少し戻り、光の魔法も少しパワーアップした日、その日の太陽も温かく燦々と照らしていた。
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