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もみの木の章 3歳児
━━━3歳になった。
朝起きるとHPとMPが4になったんだー。
俺は狼に育てられた狼幼児になったんだー。
そうそう、あれは2歳になった時だったなー。パワーアップした光魔法でガルさんの視力がまた少し良くなって、少し遠くのものも見えてきて喜んでいたっけなー。
さて問題です。テテン!俺はなぜ外に一人ボッチにいるでしょうか?
チッチッチ。
時間でーす。えっ?調子にのって外に出掛けたかって?ブー!
正解は俺とガルさんの一人と一匹で出掛けたんだけど、彼女の背に乗って、水辺を走ってたら、あの狼俺を落としたの気づかずに行ってしまったんだー。触覚がないからってひどいよねー、遠い目。
……あー不幸だ。泣きっ面に蜂とはこの事だな。
そんなこんなで俺は今スライム達に囲まれている。大事な事だからもう一度言う、俺は今スライム達に囲まれていのだ。
「くっ来るな、来るんじゃない」
緑色のゼリー状の中に核が浮いているグリーンスライム、そんなのが何匹もどんどんと近づいてくる。後ろは水辺、これぞまさしく背水の陣、いやこんなの3歳児には無理だ。俺はこのままこの緑スライムの酸に溶かされて死ぬのか……それとも溶かされながら食べられて死ぬのか……。
「ガールさーん!」
シーン……。
そうだ彼女耳も聞こえないんだった!ヤバイ、ストレスでIQ下がっているな。えーいヤケクソだ!こうなれば……。
一か八か、俺はスライム達の間にあったわずかな隙間に向かって飛び込んだ!
迫るスライムの群れ、よし行けるか?
スライムの群れが次々と体当たりしてきた!ワン、ツーとボクサーが放つような軽快なリズムのパンチのように、1匹目2匹目とスライムが体当たりされたが、なぜか体の表面にあらわれた透明な膜がシールドのように防いでくれた。が、
「ぐふっ!いっ!おっと!」
後続に体当たりしてきたスライム達が、左腕、右肩、最後に後頭部へと幼児の体を突き飛ばす。激痛とともに、つんのめるようにして砂の上へとうつ伏せの状態で倒されてしまった。
「痛…」
ついショックでぼやいてしまう。頭もクラクラするが、なんとか群の中からは抜け出すことはできた。
いてー、けど早くこの場から離れないと、涙目になりながら立ち上がる。迫るスライム達の気配、ヤバイ!離れないと!
立ち上がって1、2歩歩いた時だった。後ろで風が通り抜けた。振り返ると宙に舞い散るスライム達が、
「ガルさんだ……」
呆気にとらわれている間にガルさんはスライム達を蹴散らすと、俺の正面に立った。
「グルルルルァァ!」
たったのひと吠えで残りのスライム達が離れていく。
助かったー。安心したらスライムからダメージを受けた箇所からズキズキと痛みだし、痛みが増してくる。痛い。本気で襲いかかる本物の魔物……めっちゃ怖いんだけど。
前世の子供の時、無数の足長蜂に襲われた時がことがあったなー。背後から襲いかかる無数の羽の音、頭に激痛が走って、泣きながら逃げて帰った。おじいちゃん笑いながら頭から蜂を取っ手くれたんだっけなー。
ガルさんの体に触れる。黒色が大分薄まりかなり暗めの灰色になった気がする。
『ガルさん……』
『もう、大丈夫、イヤー、スマンスマン』
『ありがとう。助かったよ、けどどこ行ってたんだよう』
『イヤー、視力が回復するかと思ったら、ついテンション上がっちゃってさー、あれ?ルクスの匂い薄くなったなーと気づいて急いで戻ってきたよ。良かったなーお前助かって』
『いや他人事かよ!まったくけど良かったー、そうだ、ここで目を治そうよ』
こんな恐ろしい所早く帰りたい!
『おお助かる、じゃー頼むぜ』
ガルさんが顔を近づけてきたので魔力をすべてつぎ込んで、MP4分のさらに大きくなった小さめの光魔法をかけた。
『おお!また少し視野が広がったぞ、ルクスの顔も大分ハッキリと見えてきた。でかしたルクス、遠くの方もぼんやりとだが見えるようになった』
彼女の視線の先を見て振り返ると、俺の目も遠くの景色が大分見えるようになっていた。まるで宇宙を支えるかのようにいくつかの石柱が空まで伸びていて……異世界にいることを実感させられる。
水辺のまわりの砂地には恐ろしきスライムやエリンギみたいな手足のついたキノコなんかが歩いていし、まるで異世界、いや異世界に転生してしまったんだよなーと思い知らされる日になった。
あっそういえばさっき攻撃されたときなにかが俺を守ってくれた。ステータスを確認してみるとHP0になっている。これだ!と思い、念のため常にHP緑バー100%MP青バー100%表示が戦闘中出せるようにしといた。見る力だからできたことだ。さすが見る力。けどもう戦いたくないなー。
その後は無事にガルさんと帰った。
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