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もみの木の章 大きなもみの木の下で
回復薬になりそうなものを探しながら砂地をひたすら進む、とはいってもキラキラと光る砂しか見えないから、砂の上をアリエルの後ろについてトコトコと歩いているだけである。
途中何度か魔鼠を見つけたが戦闘は避けたいので、そのつど迂回しながら先を進んだ。
「アリエル、あれ…」
進んでる方向とは違うが、右側に化石し、天上を支えるように聳え立つ巨大なもみの木の1本が見える。さっきからなーんか気になっていたんだよなー。あっそうだ!もしかしてあの木の下に何かあったりして。
「あの木の辺り、見てみないか?」
「そうね、少し遠回りになっちゃうけど見て行こっかー」
方向転換し、化石したもみの木の柱に向かって砂地を進む。
「なにか見つかるといいねー」
アリエルは明るい声で笑顔を向けてきた。
「そうだね」
アリエルの笑顔を見てると元気をもらえる。
期待を胸に歩いていると化石化したもみの木の近くまでやってきた。巨大なもみの木を見上げる。命尽きてもなおこの世界を支え、やがて崩れて岩や砂となるもみの木の成れの果て。
視線を落とすとそんなもみの木にアリエルが目と鼻の先のところまで近づいている。アリエルはもみの木に手を触れた。すると風化したもみの木の石柱は、ポロポロと崩れていく。
「ありがとう」
彼女が語りかけるように呟いた。
そんな姿を見てるとなんだか心が和む……あっそうだ!なにか回復薬になるもの探さないとだよなー。なにかないかな……ん?あそこあるのはなんだ?
「アリエル足元」
「えっ?」
地面を良く見れば、砂と一緒にもみの木の葉が積もり重なった地面の上に、傘の形をしたコケがいくつか生えているではないか!
「おお、見たことないコケだねー」
「確かに変わった形のコケだな、鑑定してみるか」
カサゴケ
酸の雨からこの世界を守り散ったもみの木の葉の残骸から生えてきたコケ。軽い傷を癒す効果があるとされている。
素材
カサゴケの薬草 HP20程回復
「これ少しだが回復効果があるぞ」
「おおー、やったじゃん」
もみの木の力が宿ったコケか、よし早速使ってみよう。口に入れ、ムシャムシャとカサゴケ噛み締める。うーん苦い。良薬口に苦しか。
「おっHPが10になってる。ほかのも採ってこ」
もみの木の周りに生えたカサゴケをウエストポーチに入れていく。
───移動しながら10本くらい採った時だった。
やたらでかい傘が、いやこれは……なんだか揺れだしたぞ。そいつは大きく体を揺らして、スポンと地面から抜けだしてしまったのだ!
「魔物だ!」
バスケットボール2個分くらいの大きさのキノコの魔物、あっという間に手足が生えてきて、こちらに向かって突撃してきた!
「わ!」
4のダメージ!
HP6/10
まともに体当たりを喰らってしまった。急いで木剣を抜いて、叩きつける!
「ギギ!」
HP80%
木剣で攻撃すると魔物の緑バーが2割削れている。
「ギーギー」
キノコの魔物が突っ込んでくる!
3のダメージ!
HP3/10
避けようとしたがダメだった。
「ハァー!」
もう一度キノコの魔物を叩きつける!
HP60%
緑バーを2割削った。
きのこの魔物が突っ込んでくる――避けれない!
3のダメージ!
HP0/10
ヤバイ!HPがなくなった!このままだと魔物の攻撃をまともに喰らってしまう。スライムから受けた暴行の記憶がチラつく。向かい合いがら後ろに下がる、きのこの魔物が追ってきた、さらに後ろに下がっる、きのこの魔物が迫ってくる!
ダメだ回復するヒマもない、いくしかないのか。後ろに下がりながら覚悟を決め、前に出ようと木剣を振り上げた。ん?きのこの動きが止まったぞ?
警戒して見てると左右にうろつき始めた。だがなぜか知らんがこちらにこようとはしない。
振り上げた木剣を下ろしてみてもあれ以上向ってこない。
……なぜだ?なにか理由があるのか?
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