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モミの木の章 閉ざす者
まぶたを閉じてると。
〜♪
音がする。あの悲しくて助けを求める音楽だ。
「ゲホゲホ」
全身が痛くて、痛くて、どこも動かせない、俺は……死ぬのか?
『助けて…』
声がする。
『助けて…』
切実に助けを求める声が聞こえる。儚くて綺麗な女性の声……。
「だ…れ?」
『私…私は―――』
意識が朦朧としてよく聞こえない、けどこの声はどこかで聞いたような。
……ダメだ、なにも思い出せない。
……一瞬長くて黒髪の乙の姿が浮かんだ。けど顔はボヤけててよくわからない。誰だろう?
……会いたい……なにか大切な存在を忘れている気がする。
『だいじょーぶ!』
優しく、力強く、励ますような彼女の声。
「だ…れ…?」
『―――あなたのこと―――忘れないから』
飛び飛びに聞こえたその言葉が、嬉しくて、涙が頬を伝う。
〜♪
儚くて胸に染みる音楽が流れている世界で。
……音が止まった。
暗闇と静寂の中から、
テテテ!テテテ!テテテ!テ!テ!テ!テ!!
ロック調のエレキギターの曲が胸をハートを熱くさせる!
……なんだか痛みがどんどん引いていくではないか!
「はっ!ハァーハァー、スー、ハー」
目を覚ました。大きく息したあと
、とりあえず深呼吸して落ち着かす。
あれ?服はボロボロだが、身体はどこも怪我していない。
「治ってる!」
……そっかー、さっきのは夢だったかー、それにしても不思議な夢だった。なんだか胸が締め付けられる、叶うなら夢でみた彼女に逢ってみたい。
「あー木剣が折れている。盾は無事か……」
ガゴが地響きをあげながら近づいてきていた。
それぞれを拾う、ここは……半島の先じゃないか、そうか!俺はガゴにふっとばされてここまで来てたのか!
ガゴと対峙する。ガゴは腕を引き、殴り掛かってきた!
当たれば体が潰れて凄惨な死をとげたであろう巨大な拳が目の前で止まった。拳風で風が通り抜けていく。
〜♪
さっきから陽気でふざけたギター音が鳴っていた。その音楽が俺の恐怖心を消していたのかもしれない、あるいは―――。
ガゴは腕を震わせて動けないでいる。
―――こうなることをなぜかなんとなくわかったんだ。
―――ガゴの胸のあたりが開いた。上下に割れたそれが完全に開ききると、中から黒い宇宙服姿の奴が出てきて、割れた下の上に立っている。
奴はヘルメットを取ると、風が長いブロンズヘアーを風がなびかせた。鋭い鷲鼻をした西洋風の映画のスクリーンでしか観たことのないような美男子が、渋くダンディーな声で口を動かす。
「ほーう、想いが形になるというのか?あーそうだ、これは失礼」
彼は胸に片手をつけてお辞儀した。
「私の名は、閉ざす者ロキ。未来永劫この場を閉ざし、誰も通さぬよう、とある方と契約していてねぇー。だから君をこの先へと、通すわけにはいかないのだよ」
微笑を浮かべているがその黄金の瞳は、笑ってはいない。
「それにしても耳障りな音楽だ」
彼は大して効いていなそうにおどけて両手を肩まで上げ手のひらを上にして、肩を上げた。
「この音楽が聞こえているのか?」
「ええ、こう見えて一応、亜神の仲間に片足突っ込んでましてねぇ……
それにしても耳障りな音楽だ。これがなったら私が発見されることも、彼女が死ぬこともなかったでしょうに」
えっ!!
「アリエルは死んだのか!?」
「ええ、おそらく最後の障壁を出すのに全命をかけたのでしょうねぇー。私が見たときには死んでました。おかげでとどめを刺す手間が省けましたよ」
彼はふざけた顔をして両手と肩を上げおどけたポーズをした。
「さてと、お話はこのくらいにして、少し本気を出しましょうか!」
彼は微笑を浮かべながらヘルメットを被ると奥へ入る。
入ってしまう直前鑑定をかけてみたかが、黒い靄が見えて、鑑定できない。
そして胸の辺りが閉じきるとガゴからスピカー音のする声で話しかけてきた。
「ハハハハハ、この程度の魔法でいつまで私を止めていられるかな?それにこいつは対光魔法用に作った魔道兵器。君達に万に一つも勝ち目などなかったのだぁぁ!」
ガゴの胸から禍々しい黒いオーラが漂い、血管のようなものが胸から全身へと駆け巡っていってるではないか!
折れた木剣を見つめ、思う、勝てるのか?俺に……。
血管のようなものが行き渡ったると魔道兵器が動きだした!
腕を引き、拳が目の前から遠ざかるとその腕を振り上げ、殴りかかる体勢にはいった。
その時だ!小さな光の粒子の塊がどこからか現れ、ガゴに強力な光を放った!光がガゴを包んでいく……。
「なんだこのヒカリは!見えん、なにも見えん!」
ロキの慌てた声、ガゴの動きが止まっている…。
光の粒子がこちらに飛んできた!
「ルクス行くよ!」
「その声はアリエル!?」
「説明はあと、こっち!」
「えっちょっ…」
光の粒子ことアリエルが飛んでいってしまい、振り返ると消えてしまった!
え!?アリエルどこ行ったんだ!?
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