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もみの木の章 次元の狭間
―――洞窟の景色が歪み、景色が鮮明なっていく、そこは白い花の低木が―――。
―――気がつくとそこは真っ白な世界だった。果ての見えない真っ平らな白い道を歩く……見上げれば、両端の垂直の白い壁が、はるか彼方まで続いていて……白い雲のような先へと消えていた。
「ここが次元の狭間なのか?……」
道の端は手を広げてギリギリ届かないくらい……人工的に作られたような無機質で真っ白な道を歩く。
……この先に何かあるのか?
「いや、そもそもこっちであってるのか?」
後ろを振り向いても白い道が、はるか彼方まで続いている。
「まあいいや、とりあえずこっちに行ってみるか」
とりあえず方向を変えないで進んでいく、軽く走ってみる、ジョギングくらいのペースで、走った―――走っても走っても先の景色は変わらない。
「ハァハァ」
スピードを緩め、再び歩き出す。見渡しても白い壁、白い道、進んでも進んでもその景色は変わらない。
「……アリエル」
思い出したように呟く。
「そうだ!アリエルは?アリエル!?」
ウエストポーチを見てみる。
「ない、ない、ポーチがどこにもない」
ウエストポーチがない、いやそもそも格好が、
「なんだこの格好は?」
全身が白いTシャツと白いズボン、格好が変わっている!大事な毛皮の一張羅はどこいったんだ?……顔を上げても白い世界がっているだけだった。
「アリエル!アリエル!」
叫んでも音が反響するだけで、彼女から返事がない。
「……行くか」
諦めて。
白い道を。
歩いたり。
走ったりして、
ひたすら進んだ。
―――歩いて、歩き疲れて、座り込んだ。
「疲れたー」
歩いても、歩いても、景色は変わらない。疲れた、今日はここで休もう。
白い廊下に寝転んで、目をつむる。
「あー……」
白くて無機質な景色ばかり見てるとおかしくなりそうだ。暗闇が心を落着かす。
―――トントン、トントン。
「ん?この音は……」
ウトウトしてると聞いたことがあるリズムの音に目を開ける。
トントン、トントン。
音がする。辺を確認すると白い壁に凹凸?が!立ち上がって近づいてみると、それは白い扉だー!
白い扉の目の前に立つと。
トントン、トントン。
「知らないの?う○」
ガシャ。聞いたこがあるその声に思わず扉を開けてしまう。
「アリエル!」
……明けた先、その先にあったのは、また同じ、白い壁と道が続いていた。扉も消えてしまっている。
「マジか……」
歩いて、扉を探してみる。
「ない」
走って、扉を探してみる。
「ない」
走るのをやめて、歩いて探す。
「ない、ない、どこにもない」
あるのは白い壁だけだ。
―――進んでも、進んでも、白い世界は変わらない。
「もう、やーめた!」
寝転んで目をつむっていると心が落ち着く。白くて無機質な世界ばかり見てると心が沈んでいく、憂鬱だ。きっと、お城に住む王族達も、白くて無機質な部屋に閉じ籠もっていると、こんな気分になるのかもしれない、だから絵や高級な家具を飾って、人間らしさを感じていたいのかな?
トントン、トントン。
目を開ける、いつの間にかウトウトしていた。周りを見れば白い凹凸、扉を発見した。
トントン、トントン。
「知らないのー?う○
「アリエル!」
ガシャ、開けて中を覗くが、白い世界が広がっている。気がつくと、扉を開けるパントマイムをしたかのように見えないドアノブを掴んだ格好で白い道の世界に立っていた。扉も消えている。
―――白い世界、どんなに探しても扉は見つからない。疲れてウツラ、ウツラとしているとまた。
トントン、トントン。
扉の前に立つ。
「知らないの?う○「アリエル!」ちくんはつっつくんだよー?」
「アリエル!そこにいるのか?」
……。
返事がない
……。
「アリエル、そこにいるのか?」
……答えてくれアリエル。
ドン、ドン。扉を強く叩く。
「アリエル!」
ドン!
「……ダメだ。なんの音沙汰もない」
……。
……あっそうだ……ダメ元でやってみるか。
トントン、トントン。
ここだアリエル。
トントン、トントン。
おれは、ここにいる。
トントン、トントン。
「俺は、ここにいる!!」
……。
返事がない。
……。
膝から崩れ落ちるように座った。
……。
……光?
顔を上げると扉から虹色の光がもれている。
扉開いた。
―――どこからか光と共にあらわれた少女が無邪気な笑顔で近づいてくる。彼女は僕の手を取った。優しい温もり、なんだか懐かしいな……。
「行こ」
無邪気な声を聞いて頭に電気が走った。
アリエル君だったっのか!!
その瞬間!少女が天真爛漫な美女になった。彼女に引っ張られ、立ち上がる。彼女に連れられ歩んでいく……光り輝く扉を潜った。光に包まれ……光に溶けていく―――。
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