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もみの木の章 アバン 最終話
そこはじめじめして薄暗ーいところで、ぼんやり光ったカビや苔なんかが岩肌に生えててねー、そこには毒々しい紫色をしたスライムや毒キノコの魔物。そして邪鬼が住みついた地下洞だったんだ。けどこの世界にしては珍しい清水が流れていて、煌めく砂地が広がる場所だったのさ。
ある日、その空洞に小さな太陽が昇った。陽の光が洞窟を照らすと、なんてことでしょう!
スライムの毒は消えて緑色に変わり、キノコの魔物の毒なんかも消えたではないか!そうしたらなんとそれを食べていたゴブリン達の醜悪な表情もみるみると正気を取り戻していって、穏やかな表情を取り戻していくではあーりませんか。
やがて太陽の光がゴブリンに当たると、心地のいい疲労感と共に少しずつ邪気を払っていったのでした。
それから太陽は清水に沈んでいき夜になり月があらわれ、日はまた昇る。そんな日々が続き、いくつかの月日が過ぎさったある日の夜のことです。なんとそこにはすっかり丸くなった二人がいました。
「シクシクシク」
「どうしたんだい?爺さん」
「婆さんや私達はなんて酷いことしたんだろうな」
「そうですねー爺さん、私たちはとんでもないことをしちゃいましたねぇー」
「どうすればいいかのう?」
「どうすればいいでしょう?」
「うーむそういえば、さ迷い続けていた暗黒時代、あの頃は酷かった。食べるものも飲める水もなく、寒さに震えていたのう」
「そうでしたねぇ……爺さん」
「あの時ふと親父の言葉を思い出したんじゃ、なんでも能天気で正直者もみの木がいるから、なにか困ったことがあったら彼の元へ行くといいと言ってたのをのう、ワシらは藁をもすがる気持ちで、一緒にここに来たんじゃったのう」
「そうですねー爺さん」
「確かにとんでもねぇー馬鹿だった。お陰で助かったんだが……悪いことをしたのう」
ヘックシュン!
「そうですねー爺さん、ん?いまなんか太陽みたいな、壮大なくしゃみをしませんでしたか?爺さんよ」
「いや、わしはくしゃみなんかしとらんよ婆さんや」
その時です。びゅーと強風が吹き、もみの木の枯れ木で作ったボロ小屋がガタガタと揺れだしたのです。
「うわー!こりゃヤバイ、小屋が吹っ飛びそうじゃわい」
あわてふためく爺さん。
「祟りじゃー、祟りじゃー、もみの木様の祟りじゃー」
ゴブリン婆さんはうつ伏せに丸まって震えております。
すると外にパーっと明るい光が灯りました。彼らはそれをみて卒倒したと言われております。
さあ、お待たせいたしました。ここからいよいよ、主人公の物語が始まるのです。本日はこれまで、次回をお楽しみにー。
by紙芝居おじさんロキより
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