あなたじゃなくて

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あなたじゃなくて

バンッと衝撃音がする。 その音を聞いた瞬間、あたしは心の中で呟いた。 ―これでやっとあなたを消せる スマートフォンをバッグから取り出すと、SNSからあなたのアカウントを消す。 「あなたを消せた」 口に出すとより実感できる。「やっと!」 不思議だった。あたしの好みの男性はもっと知的な人だった筈なのに、ビールジョッキを片手に大口を開けて笑うあなたが気になって目で追ってた。 背が高いのはタイプだったから、そこはオッケー。だけど、あんなに大きく口を開けて豪快に笑う男性、あたしの好みじゃなかったのに。 「なんでだろ?」 「え、どうしたのユキ?」 隣に座っている親友のカエがあたしの顔を覗き込む。「何か言った?」 「ううん、何でもない」 「まぁた、ヒトシのコト考えてたんでしょ?」 カエはいつものように、あたしが大好きなヒトシの名前を出してからかう。 「ちが…まぁね」 否定しようとしたけど、あなたが気になってるってカエには知られたくないから頷いておいた。そして、カシスオレンジのグラスに手を伸ばす。 「いいよねぇ、ラブラブで」 「何言ってんのー。カエはモテてるから選び放題じゃん」 「そんなコトないよぉ」
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