見知らぬ女

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

見知らぬ女

私の前世は勇者です。 と、五千万年に一度のイケメン、俳優兼、小説家兼、外科医兼、剣道オリンピック金メダリスト所持者の、鏡坂炎垂(かがみざかえんすい)という名の男は、そう月曜深夜のバラエティ番組で話した。 それを見ながら、オンライン対戦の格ゲーをしていた、青年は。相手に切断され、ブチギレて、壁を台パンしていた。 青年「クソがよぉ…二十連勝中だったんだぞ、くそ…あ、やべ…あぁ、また台パンしちゃった…やべ、隣の人に怒られるかも…」 ごめんなさい…。 と、決して隣には聞こえない声量で、そう呟くと。 落ち着け、こんな時は夜風にあたるんだ。 素数を数えて心を落ち着かせよう…1、3、5、7、9、11…。 それは奇数である。 青年は、窓を開け、心の中で独り言をぶつぶつ言い始める。 なんか、オンライン、重いんだよなぁ、有線にしようかな…でも、いちいち、調べるのもめんどくせぇ…あぁ、脳みそ熱くなってきた、もう考えるのやめよう。 俺は親が不動産を経営してて、ニートなのにアパート暮らしだ。 俺が住んでるアパートは親が経営してるから、まぁ、実質タダ…。いや、タダじゃねぇな、何言ってんだ…。 俺は剣河(けんが)という、名前を付けられた哀れで可哀想な18の無職。東京生まれ、東京育ち、東京住み。 高校を卒業して、四ヶ月が経つ。 俺は何の能力もない…凡人だ…この世界では、その現実は残酷過ぎた。 この世界は前世の能力がそのまま、現世の魂に引き継がれる。 つまり、前世で、チートみたいな力を持ってたら、現世でもその力を使える。 そんな感じで、みんな輪廻転生を繰り返す。 だけど、俺の前世は中世ヨーロッパの片田舎に産まれた、ただの凡人で、そこそこの金持ち商人が住んでる屋敷の使用人をしていた。使用人の中でも下っ端な方、給料もカスだった。 それで、現世では給料すらない、今の所は。 あぁ、友達も恋人もいない…。 まぁ、環境には恵まれてる、何不自由なく過ごせてるから、それに、人生で一度も、特別、嫌な思いをした事はない。 あぁ、でもなんか、幼馴染の同級生で学生の頃、いっつもからかってくる女いたな、あいつ、何してんだろうな。 今まで生きてきた、人生の中で一番嫌だったのは、俺の好きだったアニメのヒロインが男の娘だった事かな…。 なんか、snsでもいいから、友達欲しいな…。 目標は一応ある、ゲーム実況をしてみたい、面白いネタとかも一応考えて、スマホのメモ帳にネタを書き溜めてる。 オンライン対戦で神みたいなプレイをして、それを最初に流すだろ?それで、え?俺って、このゲームの申し子…?ってテロップ出して、その後、俺がゲームでボコボコにやられて死ぬ瞬間を、連続して、バババっと流す。 ぶほぉっw絶対おもろいやんw…。 待てよ、編集のカットとかってどうやってやるんだろうな。 と、気分を高揚させながら、スマホで調べようとする時。 母から電話が来た。 それを、切ろうか迷おうとしたが、窓を閉めて。 電話に出た。 剣河「うぃ…」 母「あんた、昨日、バイトの面接行ったの?」 剣河「いや、まぁ、電話はしたんだけど…」 母「はぁ?電話はって何よ、じゃあ、行ってないの?もう、もう、養いきれないからね、不動産経営してるからって、金が湯水のように出てくるわけじゃないのよ?今、経営が傾いてちょっとピンチなんだから、なんで、いつもあんたそんなの、途中でなんでもやめる、やめる、やめる、俺には出来ないって、いっつもそうじゃないのよ」 剣河「いや、その…なんか…やっぱ、向いてないかなって、向いてない事したって、やっぱり、長続きしないと言うか、やっぱ、向いてる仕事をした方がいいじゃん、やりがいもあるだろうし、その方が母さんもいいだろ?」 母「あんたねぇ、そんな事言う前にまず働きなさいよ、それから、考えなさい、人生経験積んで…あんた、ちゃんと朝散歩とかしてるの?日光に浴びて、きちんとした生活を送らないとだめしょ?」 剣河「いや、朝散歩はしてるよ、決めつけないでよ、なんでそうやって、いつも決めつけるの?僕の事を知らないのに、当たり障りのない事言って、それで、解決すると思う?一緒に探してよ、働け働けの一辺倒じゃん、僕は社会の事何も知らないんだから、協力してよ、それなのに、母さんは母さんで忙しいからって、放置したままじゃないか」 母「…あんたに自立して欲しいのよ、独り立ちして欲しいの」 剣河「だから、それを手伝ってよ、確かに、独り立ちは僕もしたいけど、誰か協力してくれる人がいないと、前に進めないよ、母さんは自分の主張を押し付けて、まるで話し合いにならない、いつも」 母「あんただって、ママの気持ち考えずにズケズケ言ってるじゃないの」 剣河「じゃあ、母さんに似たのかもね」 母「…」 剣河「…」 母「…あんた、何かしたい事ないの?」 剣河「いや、まぁ…その………ゲーム実況とか?YouTuboとかで」 母「それで?」 剣河「それで、色々機材必要なんだよ…」 母「…いくらよ」 剣河「まぁ、そんな高くないよ、二十万くらい」 母「馬鹿じゃないの!!!!!?」 剣河「怒鳴らんでよ、鼓膜破れるじゃん…」 母「あんたねぇ、そういうのは、自分で働いて買いなさいよ、もう…呆れた…」 剣河「別に、母さんに、出してなんて言ってないじゃん、ほら、また決めつける」 母「…」 剣河「安い機材だと画質とか悪いから、厳しいYouTuboの世界じゃ食えないの」 母「………分かった、じゃあ、二十万、あげるから」 剣河「え?いいの?」 母「ほら、やっぱり、親の金で機材買おうとしてるじゃないの」 剣河「母さんが、自分であげるって言ったんじゃん、僕は頼んでないのに、意味わからん」 母「とにかく、なんでもいいから、やってみなさい、…はぁ…」 とその態度に再度呆れた様子で、母は電話を切る。 剣河はいっきに、現実に戻された気分になった。 本当は二十万ではなく、二十七万円であった。欲しかった機材諸々の値段は。 そして、また、窓を開けて、夜風に当たる。 もう…いやだ…でもなぁ…いつまでも、ニートやってる訳にも… 俺も、空を飛べたり、雷を手から打てるような力があればな…。 と、空を飛んで、会社から帰る社会人達を頬杖つきながら見ていた。 それぞれの家に往々に、帰宅して、みな、行きたい方向にバラバラに飛んでいた。 翼を広げて飛んでいる人や、空中歩行している者もいた。 剣河「いいなぁ…」 剣河は感情のこもってない声でそう呟いた。 この世界には他にもドラゴンや、妖怪なんかもいる、子供の頃はその事実にワクワクしていた、アニメや漫画の主人公に自分を投影し、妄想をしては公園で友達とチャンバラや相撲、おにごっこをしていた、しかし大人になっていくにつれ、ただただ現実に圧倒され、卑屈になっていくばかりであった。 すると、ピンポーーン。とベルが鳴った。夜十一時に、しかも二回も。 チッ、誰だよ、こんな夜に…常識ってのがねぇのか。 遠慮なしに、二回押したから、母さんか父さんかな。 剣河「鍵開いてるから、入っていいよ」 とドア越しでも聞こえるような声量で言うと。 ドアが開く音が聞こえた。 まぁ、一応、出迎えてやるか。と、窓を閉め、玄関に行くと。 そこには、見知らぬ女が立っていた。 見た目は若い、剣河とそれほど変わらないのではないだろうか、剣河は一瞬にして、混乱しながらも、中の上だな。と無意識にその女の美しさのランクを付けた。 見知らぬ女「先日隣に引っ越してきた者なんですが」 剣河「……」息が詰まりそうだった。 剣河「…あの… 」 見知らぬ女「先日、隣に引っ越してきた、203号室の非無始と言います、非無始というのは苗字です」淡々と挨拶する女。 203号室って、さっき俺が壁を台パンした…。 剣河「いや、あの、すみませんでした、ほんと、その、わざとじゃないんですよ…。ちょっと、転んで、肩を壁にぶつけって言うか」 ガチャ、カチ。 と、その女は、剣河の部屋の鍵を閉め、扉のチェーンをはめた、思わず、口が止まった。 すると、一瞬時が止まったかのように、静寂が流れた。 剣河(なんだ、今の業者のような、早さは…手慣れてやがる……え?いや、俺、何言ってんだ?) 美女「あの、部屋に上がらせてもらってもよろしいですか?少しお話しがあるので、これ、つまらないものですが、よかったら) と、少し高級そうな菓子折りを差し出された。 剣河は彼女いない歴=年齢だった事もあり、表情には出ていなかったが、心臓が人生で一番鳴っていた。恐らく、恐怖していた部分もあった、それに、非現実的すぎる出来事が起きているので、不安もあったのだろう。自身の手が震えてる事にさえ、気づいていない、なんとも言い表わせない感情が脳内を支配していた。 剣河(待て、落ち着け、俺…今のこの状況を整理しよう…まず、初めに…いや、無理だ、そんな冷静でいられるか!落ち着け、心の中で深呼吸だ……………まず、他人を家にあげない、うん、断ろう) 剣河「あ、あのおw…はは、いや、ちょっと…」 そう発した後、沈黙する。 すると、数秒、非無始という美女と目が合ってしまい。 結局部屋にあげてしまった。 剣河(俺の馬鹿野郎!なんで、理性で動けないんだ!もし、殺されでもしたら………まぁ、もういいか…殺されても…) 剣河とその非無始と名乗る女は、リビングにある、少し、小さいちゃぶ台越しに対面して座っていた。 剣河はもちろん、粗茶も出さない。 剣河「それで、なんですか?詐欺の押し売りですか?」 すると、頬を赤らめ、美女は突然もじもじしだす。 前世であなたに助けられたのです。と言う女。 剣河(やっぱ、詐欺かよ…ていうか、詐欺師の常套語じゃん、それ、適当に聞いて、帰そ) 剣河はすかしていたが、実は美女と話せて少し嬉しかった。 非無始「前世では、あなたは見習いの使用人、私は飢えに苦しんでいた、哀れな美しい女でした。 剣河「自分で言うのか、それ」 非無始「私は、あなたが仕えている家主の屋敷にある食料を、だめだと分かっていながらも盗もうと考えたのです」 剣河「うんうん」 非無始「しかし、あなた以外の他の使用人に見つかってしまい、その使用人は、私に罵声を浴びせ、私の命を奪おうと考えたのです」 剣河「ほお、ほお」 非無始「なんとか、命からがら逃げたのですが、私はまだ屋敷の中、お腹も空いて、頭も回らず、疲弊しきって、怯えながら、隠れていた時。 あなたが、私に食料をくれたのです、その食料のおかげで、空腹をしのぎ、なんとか、その屋敷を脱出」 非無始「私は、ずっと、あなたと、結ばれたかった…」 剣河「いや、待て待て、俺も実は前世の記憶があるんだけど」 非無始「え!ほんとですか!?もう、運命じゃないですか、結婚しましょう」 剣河「いや、その、俺、そんな出来事記憶にない」 え…。 非無始「覚えていないんですか?」 剣河「てか、デタラメだろ、そんなの、だって、屋敷に泥棒は入ってきた事あったけど、全部おっさんとかだった、それに、そんな濃ゆい体験だったら、忘れるはずねぇもん」 非無始「いや、本当ですって!」 剣河は怪訝で呆れた顔を見せた。わざと。 非無始「なるほど、私に魅力を感じないので、さっさと、追い出そうと、しらを切るつもりですね」 …。 非無始「いいでしょう、命の恩人であるあなたの事がどれだけ好きか、お伝えします、まず、私のスペックをお聞き下さい、そして、その能力であなたに尽くします」 剣河(なんなんだよ、プレゼンが始まろうとしてるよ…そこまでして、俺を騙したいのか) 非無始「ちなみに、私は、IQ300以上あります、空も飛べます、放射線にも耐えれます、新幹線と同じ速さで走れて、後、頭がなくても、一週間は生きていられます」 剣河「最後の能力怖すぎだろ!」 非無始「それと、生涯で、500人ほど、子供を作れます」 剣河「枯れ果てるわ」 非無始「野球チーム作れますね、球団クラスの」 剣河「狂ってるよ、あんた」 剣河はある事に気づく。 剣河「?いや、待て、その能力ってお前、あれじゃん!あれか!」 剣河「前世ゴキブリなのか!?」 非無始「え?なんで分かったんですか!?」 剣河「いや、まぁ、何の能力も持ってないからこそ、そう言うの色々調べちゃう…ってのは今はどうでもいい!」 剣河「え!じゃあ!お前!尚更、分かんねぇよ!なんなんだお前は!」 剣河の脳みそで、たったの一生では、一日中考えても、非無始の言っている事の真偽を確かめるというのは、不可能なので、ここで、事細かく種を明かすと、非無始の前世がゴキブリである事は正解である。 しかし、実際、前世の剣河(屋敷の見習い使用人)のおかげで助かったというのも、本当である。 事実はこのような感じだ。 剣河(前世)「えぇ!?ゴキブリ退治を手伝えって!?」 使用人リーダー「しっ!声がでかい!」と40代ほどの渋く端正な顔立ちをしている男が剣河(前世)の口を塞ぎ、辺りを見渡す。 剣河「なんで、ゴッキーが出たくらいで、大事なんですか?」 使用人リーダー「いいかい、君はまだ新人だから知らないだろうが、上流階級の屋敷というのは、汚くあってはならないんだ」 剣河「あぁ…」 使用人リーダー「って君も上流階級側の人間だったね、君のお父様、十年前に、石油を掘り当てたんだって?」 剣河「そうっすね、社会を学んで来いと、無理やり、使用人なんてやらされてますけど…」とあくびをする。 使用人リーダー「とにかく、ゴキブリを退治できたら、そのゴキブリ持って帰っていいから」 剣河「え!マジすか!やった!」 使用人リーダー「だから、声がでかいって!」とまた口を塞ぐ。 剣河は、意表を突かれ、顔をキョトンとして、首を小さく縦に二回振る。 その時代、ゴキブリは漢方薬として、ほんのちょっとだけ偉く重宝されていたそうな。 ゴキブリは一匹五百円で売れた。 一方その頃、屋敷の主人の部屋に、ゴキブリは隠れていた。 部屋には、屋敷の主人がパイプタバコをふかしていた。 ゴキブリはあえて、この部屋を選んだ、なぜなら、まず、使用人達は、主人に一番バレたくないはずだから、である。 そのため、この部屋を仮に詮索するとして、私(ゴキブリ)を探すのなら、主人が部屋を出た後。 きっと、後回しにするはず。 それに、この屋敷にゴキブリがいる事を主人にバレても困るだろう。 主人の前で私を見つけるのは、あちら側も大損だ。 できれば、こっそりがいい。と思っているはずだ。 すると、扉が勢いよく開いた! 失礼します! 屋敷の主人「おお、クター君(前世の剣河の名前)今日も元気がいいね」 ゴキブリ(えぇ!なんで!?あの格好…使用人!?) と、ゴキブリは、タンスの下の隙間に隠れていたのだが、頭を少し出して、クター(前世の剣河)を見た。 使用人と確認するや否や、さっと、体を壁のはじまでカサカサと、走って、寄せた。 そして、じっと息をひそめる。 ゴキブリ(なんで!?主人にバレたら?クビが飛ぶのかもしれないのよ!?バカなの?」 ※バカです。 屋敷の主人「それにしても、何の用かね?」 ゴキブリ(ほぉら、もう詰みね、あなたは…さぁ、どう、答えるつもり!?) 剣河「いや、主人、あの!近くに、メソポタミア文明を発達させたと言われている、宇宙人が!いるらしいっすよ!」 ゴキブリ(いや、そんな嘘で騙されるやつなんて…) 屋敷の主人「まじで!!!!見に行ってくるわッッッッッ!!!」 ゴキブリ(いたよ、なんでだよ!!!) そして、屋敷の主人は家を飛び出した。 ゴキブリ(なんで、そうなるのよ…もう、ここまでなのかしら…もしかして、私の考えを読んでいたの?この男…!) ただ、単に、何も考えずに、この部屋を探す事を最初に選んだのである、因みにこの部屋にターゲットがいる事にも気づいていない。 剣河(前世)「ふぁ〜よし!ゴキちゃん!」 ゴキブリ(ふぅえ!?いきなり、あだ名!?) 剣河(前世)「お前をもらうぜ!」 ゴキブリ(わ、私を!もらう!?もしかして…) ゴキブリ(お嫁にって事!?) ※言ってない。 ゴキブリは吊り橋効果で、剣河(前世)を好きになってしまった。 数分後。 もう、やめた。と、剣河(前世)は、床に寝っ転がった。 ゴキブリ(諦め、早!どんだけ根性ないのよ!) 剣河は鼻をほじる。 すると、過去に類を見ないほどの大物(鼻くそ)を掘り当てた。 剣河(前世)「おお!すげぇ!これはほぼ現代アートみたいなものだろ!床に飾ったとこ」 と、床に鼻くそをべちゃあ。と飛ばした。 そして、立ち上がると、大きな背伸びをした。 剣河「よし、見つからなかったとリーダーに伝えにいく…か…」 と、なにやら、カサカサと床の方から音がする。 その方向を向くために、斜め下を見ると。 ゴキブリが先ほどの鼻くそをもりもり美味しそうに食べていた。 剣河「フギィぃぃのはまるいぼらうほぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」と人間の声とは似ても似つかわしくないような、奇声を発した。 その声は、屋敷中に響いた。 すると、婦人部屋にいた、主人の妻は「何、今の悲鳴!?もしかして!ついに、この屋敷で殺人が起きたの!?」 メイド「シャーロックホームズの見過ぎですよ、奥様…」 一方その頃、パニック状態の剣河は、屋敷の主人の部屋から脱出しようと、近くにある、窓を開けた。 剣河「ちょっと待って!よく考えれば、ドアから出ればいいじゃねぇか!」 と、剣河は、ドアから勢いよく飛び出た。 ゴキブリはそのドアから、屋敷を飛んで出た。 剣河「しまった!逃げられた!!!」 剣河(まぁ、いいか…五百円くらい) と、こんな感じである。 非無始は恥ずかしがって、鼻くその事を食糧などと言ったりして、この話を美化していた。 剣河「なんだよ、前世コンプレックス持ってんのか?贅沢な悩みだな、ていうか、ほんとかよ、新幹線と同じ速さで動けるって本当なら見せて欲しいわ」 と、瞬きすると、非無始は目の前から消えていた。 剣河「え?」どこ言った? これでいいですか?と真横で、あの女の声が聞こえた。 剣河「うげゃえいおぉどああああ!!!!」 思わず、びっくりして、声と呼べないような奇声で、叫んでしまう。 非無始「かわいぃ…確か、前世で私を見つけた時も同じ、叫びを上げていましたよね…」 剣河「可愛いって言うな!」く、屈辱…。 非無始「どうですか?分かってもらえましたか?」 剣河「はいはい、マウント取れて良かったね」 非無始「かわいぃ…」 剣河「この野郎…」 非無始「あの、このまま押し倒してもいいですか?」 剣河「ごめんなさい」 剣河(落ち着け、こんなイカれた能力持ってる奴に勝てる訳ない、それに最近の研究で発見された事だが、ゴキブリは、性的共食いをすると言われている、そう、この前世の力を現世でも使えるってのは、一見すると、めちゃ、羨ましいが、倫理観や、思考、考え方が、前世に引っ張られて、前世が動物や昆虫の奴らは犯罪率がめっちゃ高い傾向にある、ここは、不本意だが、下手に出て、あまり、相手を刺激しないようにしよう…) 剣河「え、あの、そういうのは、まず段階を踏んでからで」 非無始「え?じゃあ、段階踏んだら、いいんですか!?」 剣河「え、えぇ…まぁ、はい…w」 非無始「よし、では、分かってもらえたので私は帰ります」 と、音速で帰って行った。 剣河「どうしよう…警察に通報…いや、して、何て言うんだ?それに、仮にあいつが襲ってきて、その時、警察を味方につけていたとしても、海外ドラマとか映画みたいに、モブ警察官があの非無始って女に能力で、殺戮される予測しかつかないんだけど…まぁ、とりあえず、どうでもいいか…」 剣河は不思議と冷静だった。色んな感情が渦巻くような奇妙な体験をした時、人は案外冷静になれるものなんだと。剣河は思って、その日は寝てしまった。 続く…。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!