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 白が基調の、高原にピッタリのモダンな建築様式。 「涼子さん……あ、涼香ちゃんのお母さんね。彼女に救われたの、お母さん」 「うん。さっき涼香ちゃんから聞いたよ。良かったね、お母さん」  母は優しい眼差しで頷いてから、 「代わりにね、今、フルートを教えてるの」 「えっ、フルート?」 「そう。絵を教えてくれたお礼に」  と言って、カフェの中に見える涼子に視線を送る。  理解が追い付かない泰彦が、 「お母さんがフルートを教えてるの?どういうこと?」  そもそも、母とフルートが結び付かない。 「母さんね、結婚するまで、ここでフルート教えてたんだよ」 「えーっ、そうなの?」  泰彦の声が、森に響き渡る。初めて聞く、母の結婚前のこと。 「別に隠してたわけじゃないんだけど。お父さんが、いい顔をしなかったから」 「……やめろって言われたの?」 「はっきりとは言われなかったけどね。だから、結婚して、独身の私は全てここに置いて、新たな生活を始める覚悟で出てきたの」 「そうだったんだ」 「でも、無理し過ぎたみたい。結局、みんなに迷惑かけちゃった」 「……お母さん」  涙ぐむ母を見て、新たに込み上げる。母は洟をすすりながら続けて、 「実はね、涼香ちゃんにもフルート教えてたこと、あるんだよ。たった半年だけどね」 「えーっ」  またしても泰彦の声が響く。 (そう言えば、幼少の頃、フルート教室に通っていたと言っていた)  国府津駅のホームで話した時のことを思い出していると、 「泰彦、この後カフェでライブやるから、見ていって」  母がそう言って、泰彦の手を取り、歩き出した。  入ったカフェ店内は、4人掛けのテーブル席が10個ほど。奥に小さなステージが設けられ、簡単な飾り付けもなされていた。 「じゃ、母さんも準備があるから、何か好きなジュースでも飲んでて」  そう言ってステージに向かう母は、K町にいた頃とは別人のように輝いて見えた。
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