1.ナタリア、君を心から愛している⋯⋯僕と⋯⋯。

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1.ナタリア、君を心から愛している⋯⋯僕と⋯⋯。

 レアード皇帝が体調を崩してから、皇位継承権争いは激化していた。   今世で、私は紆余曲折あり、男主人公ダニエルの専属メイドとして過ごしていた。  毎晩のルーティンワークとして寝室でダニエルの皇子の寝支度を整えようとするが、手がどうしても震えてしまう。  彼の夜着のボタンを掛けようとすると、その手を握られた。  突然の出来事に思わず、彼の澄んだルビーのような瞳を見る。 「僕の先程の言葉に一点の嘘偽りもない。ナタリア、君を心から愛している⋯⋯僕と⋯⋯」  薄暗い寝室で、燃えるような赤い髪に憂いを帯びた赤い瞳をしたダニエルが私を見つめている。  あるはずのない聞き間違いだと思い込もうとしたが、私はこの部屋に入る前彼から愛の告白されていた。  彼はエステル・ロピアン侯爵令嬢との婚約を破棄したばかりだ。 (私を愛している? 本当に?)  胸の鼓動が死んでしまうのかないかと言う暗い早くなり、私は美しい彼の瞳の赤に見入っていた。  その時、突然、寝室の扉が開け放たれた。  目の前には息を切らした失踪中だったはずのマテリオ皇子がいる。  外は雪が降っていたからか、彼の銀髪は湿気でべっとりと顔に張り付いていた。私とダニエル皇子が手を握りしめあっているのを睨みつけると、勢いよく近づいてきた。   マテリオ皇子の手には血が滴る剣が握られていて、私は釘付けになった。   「ナタリアを返して欲しければ、皇位継承権を放棄しろ!」  突然、ダニエル皇子が私の体を反転させ私の髪に刺さった簪を抜いて、私の首筋に立てた。  私の命などマテリオ皇子にはどうでも良いはずなのに、なぜこのような事を彼がするのか理解できない。   (ダニエル皇子殿下⋯⋯私を愛していると言ったのは嘘だったのね)  皇子様から「愛している」だなんて言われて浮ついてしまった自分を恥じた。  前世ではホストクラブで破産して、今世でも男に騙されているのだから笑えてくる。   「ふっ」  自嘲気味に鼻で笑ったマテリオ皇子は、剣を床に落とした。
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