第1話 喫茶店とエルフ

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第1話 喫茶店とエルフ

「明日あそこに行ってこようかな」 俺は教室の窓の外を見て呟いた。 外が良く見える窓際の席は気に入っている。 俺は松永裕也17歳の男子高校生だ。 両親は事故で3年前他界した。 残ったのは一軒家とお金だけ。 保険金で暮らしていけるので、まだ良かった方かもしれない。 幼馴染の中嶋あみが、俺の顔を見て、顔をしかめた。 黒髪のショートカット、目はクリクリしていてリスを連想させる。 制服をキッチリと着ていて真面目な優等生の印象だ。 俺よりだいぶ成績が良かったはずなのに、何で同じ高校へ来るのが不思議だった。 「お金の使い道は・・とやかく言わないけどさ、またアニメグッズ買ってくるの?」 「いいだろ。アニメは日本の文化だからな」 散財してくるさ。 俺の唯一の楽しみなんだから。 **** 東京、秋葉原――。 電車を乗り継ぎやってきた。 楽しい時間はあっという間だった。 「今日も楽しかったな・・・」 リュックに沢山の本を入れる。 近くのアニメ専門ショップでも買える物なのだが。 電車で遠くまで来るのが好きだったりするのだ。 欲しい物を買い終えて、そろそろ帰ろうかと思っていたその時。 突風が吹き荒れた。 「風か?」 思わず目をつぶる。 ほこりが目に入ったら痛い。 「ここは?」 落ち着いた女性の声が聞こえた。 エルフのコスプレをした、高校生くらいの女子が道路に突っ立っている。 背は170センチ位か、スタイルもすごく良い。モデルと言われても違和感が無いぐらいだ。 きょろきょろと辺りを見回している。 そういえば、さっきまでこんな子いたっけ? 俺は少し疑問に思ったが、場所が場所なだけにあまり違和感が無かった。 「凄いなぁ~。こんなにキレイなエルフ初めて見たよ」 思わず呟いた。 完璧主義のレイヤーさんなのだろうか。 本物のエルフに見えてくるから不思議だ。 銀髪のロングヘアが風になびいて、モスグリーンの透き通った瞳が俺を見つめる。 「ここは何処なの?気が付いたら外にいて、見た事も無い風景なんだけれど・・」 「え?」 何を言っているんだ? 役に入り過ぎて、演技をしているとか? 見る限り演技をしているようには見えなかった。 俺はエルフの彼女をじっと見てみた。 エルフの耳は長くて・・質感も本物に見える。 **** 近場のカフェにエルフの彼女と入った。 話がしたいとの彼女の申し出により、立ち話もなんだから・・という理由で。 ソファーに向かい合わせに座る。 「えっと、ここは一体何処なんですか?」 「日本の東京ですけど?」 「ニホン?」 彼女は首を傾げていた。 本当に知らないみたいだ。 アニメや漫画で多少なりとも、外国人には認知されていると思うのだが・・。 もし彼女が外国人ならばという話だが。 「もしかして、異世界から来たなんて・・」 「異世界?・・そうなのかもしれませんね」 何で異世界って意味が通じてるんだろう。 話はしやすい気がするけど。  「貴方はエルフですか?」 「そうですけど、それがどうしましたか?」 「一応確認したくて、実際に見たことなかったから・・」 店内には有名な、アニメ映画のオルゴール曲が流れている。 ** 「ご注文はお決まりですか?」 薄茶色のエプロンを着た女性店員さんが、営業スマイルで話しかけてきた。 「じゃあ、アイスコーヒーを二つで」 「アイスコーヒーを2つですね。かしこまりました」 メニューを注文伝票に素早く書き込み、奥へ戻っていく女性店員。 コスプレは珍しくないのだろう、特に驚いた様子も無い。 しばらくすると、注文した飲み物が運ばれてきた。
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