ピョンくんのらくがき

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「これなんじゃがな」 「うわあ、なにこれー」  そこには、らくがきばかりされている家がたくさん並んでいました。 「今はもう誰も使っておらんが、かわいそうじゃろう? ワシが途中まで汚れをとっておったんじゃが、どうにも体がつらくてのお。でもだれも手伝ってくれないので、手伝いをさがしておったところじゃよ」 「もしかして、ぼくにこれを全部ふいてくれっていうの?」  ピョンくんは、ピョンくんの家が何十軒と並んでいるようならくがきばかりの家並みを見て、頭がくらくらしてきました。  おじいさんはある家のそばに置いてあったバケツを持ってピョンくんのそばにおきました。そしてその中からぞうきんを取り出すとおじいさんはこう言いました。 「家のらくがきはな、このぞうきんでふけるようになっておる。全部ふいてくれたら、そのスケッチブックのらくがきも消してやろう」 「ほんと? でも」  ピョンくんは、まだ不安がありました。うつむくピョンくんにおじいさんは言いました。 「心配するな。消すのはその線だけで、お前さんの絵は残してやるぞ」  それを聞くとピョンくんはようやく顔を上げて「ぼく、やってみるよ」と言いました。
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