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音楽の授業
「あ、そうだ」
休み時間。いつものように私の席にまで話に来るみか。
毎日のことになって、もう深く聞くのはやめた。
「勉強会、して良いって」
「本当?やった」
「・・・他の人とは遊ばないの?」
みかが他の生徒と話しているところ、全然見たことがないんだよな。
最初は、その時私に一番興味を持っているから私に話しかけているんだろうと思っていたけれど、今も毎日のように私に話してくる。
みかは少しむすっとした顔をした。
「他の人と話しててもつまんない」
「・・・つまんないって?」
確かに私も、話の合わない人間とはそもそも話さないけど。でも、嫌われでもしない限り、話しかけてくるやつはずっと話しかけてくる。揶揄うのだけが目的だったり、しつこく気になる人を聞いてきたり。
・・・まあ、私に話しかけると殺されるとか大袈裟なこと聞いて、だんだんと、最終的には1人も話しかけてこなくなったけどね。
「一通り話したけど、偏見ばっかり。ちょっと仲が縮まると、揶揄われるし、卑猥な話もしてくるし」
ああ・・・小学校低学年の時でもいたな。
「でも、ニニはそういうの全然ないでしょ」
・・・そうだっけ。
自分がどういう話し方をしているか、あんまり覚えてないな。みかは人を見る基準の一つとしてそれを意識しているからわかっているんだろうけど。
「次の音楽、クラシック鑑賞だっけ」
「みたいだね」
「前回みたいに曲作りしたかったって言ってる人多かったけど・・・ニニはクラシック好き?僕は好き」
「うん、まあ」
小さい頃から、日常的に流れていたような。お父さんにたまにコンサートに誘われるけど、あんまり興味のある曲が演奏されない。
「何の曲鑑賞すると思う?」
「有名どころじゃない?エリーゼのために、とか威風堂々とか」
あとはヴァイオリンの何か。何かっていうのは失礼かもしれないけど。
「カノンとか天国と地獄とか、道化師のギャロップとか?」
「・・・そうだね」
「ニニは何が好き?僕、王宮セール。あとニュルンベルクのマイスタージンガー」
「詩人と農夫。あと3つのオレンジへの恋」
「ニニって、クラシックの物語って意識する?」
「しない。何も知らずに聞きたい」
曲が聴きたいだけだから、物語は入り込んできてほしくない。
「僕も。ねえ、売られた花嫁って聴いたことある?あれ、序曲聴いた時、何これって思って逆に気に入った」
あの出だしから明るい曲ね。
「いったん静かになったから、売られる展開が近づいてるのかな?って思ったら、また賑やかになるの。何も知らずに聞くって、面白いよねー」
「・・・そうだね」
ちなみに、授業で配られた「鑑賞する曲名一覧」は、
エリーゼのために
子犬のワルツ
天国と地獄
威風堂々
ジ・エンターテイナー
動物の謝肉祭
トルコ行進曲
白鳥の湖
だった。
動物の謝肉祭は、水族館だった。
やっぱりというか、トルコ行進曲はモーツァルトの方だった。個人的にベートーヴェンよりモーツァルトの方が有名だと思っている。
・・・あんまり面白くない授業だったな。
せめて「聞きたいクラシックはありますか?」とか言ってくれれば、久々に自ら発言したのに。
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