5人が本棚に入れています
本棚に追加
みか
僕は寺村みか。
ニニとは友達だと思ってる・・・本人はどう思ってるかわからないけど。
母親の都合とか、それ以外、いろいろ理由があって何回も転校したけど、今の学校は思ったより過ごしやすい。
僕が身構え過ぎていてたのか・・・。
「みか、宿題終わってる?余裕があれば、トマトのヘタ取って洗って欲しいんだけど、やってくれる?」
「うん」
お母さんは1人で僕を育てていて、忙しいはずなのに、僕にあまり事を頼まない。
お風呂を洗うとか、自分の洗濯物は畳んでおくとか、当たり前にやっていることはあるけど、夕食の手伝いなんて、週に1回も頼まれない。
忙しいけど、疲れてはいないってことなのかな。
率先して手伝おうとすることもあるけど、大体は聞かれる。
「宿題終わってる?」
「他にやりたいこと無いの?」
「友達と遊ぶ予定はないの?」
帰宅部ってこともあって、やりたいことをやる時間は十分あるし、それは宿題を計画的に済ませた上での話でもある。
友達と遊ぶ予定はない。
「ヘタ、生ゴミで良い?」
「うん、後で庭に埋めるから、プラごみから適当に容器探して入れといてね」
ニニっていう友達が出来たのは、ここに引っ越してきて一番良かったことだと思ってる。
僕が一方的に話すことが多い。ニニは特別楽しそうにするわけでもなく、黙って聞いているけど、適当に返事をすることも全然ない。大抵、一言二言返ってくる。
・・・そういえば、ニニが笑ってるところって見たことないな。
言葉か無言で反応を示してくれることが多いから、気が付かなかった。
・・・それか、別にそこまで気にすることじゃないからかな。
ニニは、会ってからずっとああいう態度だし、僕はニニのことをまだよく知らない。「異変」って考えるほどの材料は無いから(持ってないだけかもしれないけど)、ニニが笑わないことは、多分、今はそこまで重要なことじゃない。
「みか?もう十分洗えているんじゃない?」
「あ、本当だ」
すっかり考え込んでいた。
・・・でも、考えるのは大事なことだ。
僕は友達を作るのが下手だから、よく考えて動かないとすぐに失敗する。・・・考えても失敗するけど。
ニニは多分、まだ気が付いていない。ニニにしか興味がなくて話していないんじゃなくて、他のクラスメートには、もう嫌われてるんだ。話を聞いてくれたのが、ニニにだけだったんだ。
空気が読めないとか、なんか違うとか、話が合わないとか。
この中学校も、初日はみんな話しかけてくれたけど、僕が口を開くと、苦笑いをしたり、言葉を濁したりした。
やたらと「西谷さん」について警告する。理由を聞いても、「殺されそう」とか言って教えてくれない。人を殺すような人間が、周囲と同じように学校にいるものなのかと思って問えば、怪訝そうな顔をされる。
どうして僕をそんなふうに思うのか、それだけはどれだけ考えてもわからない。聞いても教えてもらえない。
お母さんは、
「それは、理由を言いたくないんじゃなくて、大抵無いのよ。みかが悪いんじゃなくて、周りがみかを気に入らないだけよ。みかがみかのままでいるのを嫌がるような人と付き合うのはやめなさい。そのままを嫌うような人と付き合いたい?」
って言った。
珍しくお母さんが断言したから、尚更気になったけど、ただ僕とは合わない人たちってだけなのかもしれない。
「僕が変って見られているのかな・・・僕と気が合うニニも変?ニニが1人なのは、嫌われているからじゃなくて周りが『変』だと思っているから?」
みんな、嫌うより、恐れているというか・・・そんな口ぶりでニニのことを言う。
「・・・あ、ニニのこと考えちゃ駄目」
全部教えてもらえるまで、変な印象を持たないようにしないと。僕は全部顔に出るらしいからニニを傷つけちゃう。
「いつになるのかな」
最初のコメントを投稿しよう!