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悪夢
ああ、まただ。
見るたびに息苦しさが増しているような気がする。
ぼんやりとした視界に、また電話をしている母親の後ろ姿が映る。
今日の私は、待っても待っても母親に話しかけない。・・・いや、それか、私が好きに動かせるようになっているのか?
「───??」
今日は、やたらと母親の話し声が鮮明に聞こえる。
「×◼️⚪︎○△××?」
だけど、何を言っているのかまるでわからない。
・・・ああ、そうか。多分、友達と話しているんだ。古い友達と。
「◾️△・・・×!⚪︎×#?」
それ以外、シンとしている。テレビの音も、洗濯機の音も聞こえない。
と、インターホンが鳴った。
・・・そういえば、誰か来たっけ。
「&〜・・・▽!」
母親が電話を切って、玄関に急いでる。
少しだけ、私にも目を向けた。
「────!」
あ。少しずつ聞き取れてきた。
「──遅い───待ってて」
「─ません────ええと、▪️#&◾️◾️▽さん?」
「────・・・が悪い!」
「───してて。▪️#“&◾️◾️▽さん?」
「─────
・・・
「あれ?」
いつもよりは、落ち着いて目が覚めた。
少しずつ頭がぼんやりしてきて・・・いや、うん、多分思い出さなくて良い会話だ。
今日は夏休み前の、最後の学校だ。終業式だけで終わる。
夏休みが始まることじゃなくて、しばらくうるさい教室から離れられることに少し気分が上がった。
今日は、ちょっと食欲があるかも。
冷蔵庫を見ると、煮魚があった。私の朝食、もしくは、食べなければお父さんの夕食にまわるおかずだ。
今日は麦飯と・・・煮魚にするか。あとは味噌汁と、ヨーグルトも食べられそう。
口に入りそうなものは、とりあえず入れておこう。
軽すぎて忘れ物が無いか心配になる鞄を持って家を出る。同じように、薄い鞄を背負ったみかと合流して、登校した。
「最終日も、僕たちが一番かー」
「夏休み明けの初日は三番手くらいになるよ」
「え?なんで?」
「終わらなかった夏休みの課題を、親に送ってもらって、早く学校に来て済ませようとする生徒が一定数いるから」
「どこも同じだね」
結局終わらなくて、早帰りの初日に周囲が遊ぶ気満々なのに、一人帰って課題をする生徒がいるのも多分同じ。翌日からの夏休み明けテストの勉強も絶対やってない。
明日から(実質今日の午後から)始まる夏休みに浮かれてか、クラスメートが躊躇することなく次々教室に入ってくる。
そして始まる、早速午後からの遊びの誘い合い。
あまりにも話題がそればかりで、前に座るみかもワクワクした様子でこちらを見ている。
え?みかも午後から遊びたいの?
「はい、おはようみんなー。盛り上がってるところ悪いけど、終業式だから体育館に移動してー」
実質「校長先生のお話」だけの終業式が終わり、教室に戻ってから先生に「夏休みの注意事項」を聞けば、もう下校時間だ。
やることが少ないが、これでも下校開始時間に間に合っていないのがまた不思議だ。
話も後半になれば、クラスメートは既に下校し始めている他クラスを羨ましそうに見ている。
「じゃ、計画的に課題をして、事故等遭わず、楽しい夏休みを過ごしてください!先生は半分くらい学校にいますけど!」
どっと笑い声がして、話しながら足早に教室から出ていく音で騒がしくなる。
「ニニ、帰ろう」
それで、去年まで1人ゆっくり帰っていた私も、今年は一緒に帰る相手がいる。これも不思議だ。
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