5人が本棚に入れています
本棚に追加
勉強会2
「ここ・・・夏休み用のワークって、物語が一部分しか載ってないからヒントになるものが少なくて」
それはわかる。
みかが早速詰まったのは、道徳の教科書にも載っていそうな話で、主人公の気持ちを次の3つの中から選べ、というものだった。
2人のクラスメートが喧嘩をしていて、その仲介役が主人公だ。
ええと、要するに、ミヨがサナに仕返しをして、サナは怒ったけど、ミヨはもとはサナの所為だと言う。それを聞いたときの主人公の、ミヨに対する気持ちの部分が空欄になってるってことか。
①私には関係ないよ
②そんなのミヨが悪いに決まってるじゃん
③これって、どっちが悪いの?
「・・・難題だね」
「でしょ?模範解答はどれ?」
「文脈的に③?」
「そうなの?そうなの?②じゃなくて?」
「正しいのは①と②だけど、文脈的に模範解答はおそらく③」
「・・・」
みかはしばらくワークの文章を睨んでいたが、納得がいかなかったらしく模範解答を開いた。
「本当に③だ。・・・なんで?なんで?ニニ」
知るか。自分で考えろ。
「ねえ、なんで?本当にわかんない」
「・・・・性格悪そうな選択肢から消去していって残ったもの」
「・・・・確かにそうかも」
納得した。適当に言ったのに。
「でも、③ってことはさ、主人公のアヤネってもしかして1人だけ5歳とかだったりする?」
知るかそんなこと。
「あ、ニニ、あとここも」
「自分でやれ」
どうせ模範解答見ても納得しないだろ。私が説明するだけ無駄だ。・・・まあ、私も私で適当なこと言ったけど。
と、みかは悲しそうにこっちを見た。
「ごめんなさい・・・」
自分ははっきり言う割に、繊細なんだよな・・・みかって。
「ごめんなさい・・・」
「そう思うなら自分で進めて」
だが、みかは不安なのかしきりに謝ってくる。
「怒ってる?ごめんね、ニニ」
勉強会が謝罪会になりかけている。みかにはこういう時、はっきり言わないと納得できないようだ。
「ねえ、ご
「ラファエラになりたいの?」
「あ、絶対嫌だ」
私もアガタになりたくねーよ。
英語のワークを指定のページまで終わらせたところで、12時のチャイムの音が聞こえてきた。
「そういえば、お腹が空いた」
結局こんな時間までいてしまった。
「ねえ、ご飯食べる?」
「・・・本当にいいの?」
「僕は食べて欲しいな。まだ暑い時間帯だし、それに、夏休み中ずっと1人でご飯は寂しい。あ、うどんとかあるよ?それと、お母さんがゼリー作ってくれたの。別にニニのことそんなに話したわけじゃないけど、暑いから冷たいもの用意してくれてるみたい」
うどんとゼリー、か・・・うん、入る。
「じゃあ、いただいていきます」
「やった!持ってくるね」
みかは勉強道具を片付けると、楽しそうにキッチンに行った。
出てきたのは、2人分のうどんと麺つゆと、それからカットされたキュウリに味噌が添えられたもの。あとは、手作りだというゼリー。
このゼリー、生の果物使ってない?私の苦手なピンクのさくらんぼが乗ってない・・・。なんか、凝ったもの用意してもらっちゃったな。
そういえば、人の家に来ることが久しぶりすぎて頭から抜けていたけど、こういう時って何かお土産を持ってくるべきだったのか。
「あ、お箸これ使って」
そして高そうな木製の艶のある箸が出てくる。
「それ、何かのお祝いでもらったらしいんだけど、1回も使ってないんだよね。ちょうどいいと思って。あ、もちろん洗ってあるよ」
ちょうどいい?今高いことが確定したよね?手ぶらで来た客にちょうどいいか?
「なんか・・・いろいろありがとう。私何も持ってきてないけど」
「え?僕が誘って来てもらったんだからいいんだよ」
でも何か・・・あ。
「みかって、美術館好きなんだっけ」
「うん!好き!海外の美術館も行ってみたいんだけど、お金も時間も無いからねー。この辺りの美術館も回ってみようと思ってる」
聞かなくても聞きたいことが出てきた。
「うちに、親の海外旅行の写真とか変な骨董品とかあるけど、来る?」
みかがキュウリを手にしたまま固まった。
午後の予定が決まったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!