勉強会2

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勉強会2

「ここ・・・夏休み用のワークって、物語が一部分しか載ってないからヒントになるものが少なくて」  それはわかる。  みかが早速詰まったのは、道徳の教科書にも載っていそうな話で、主人公の気持ちを次の3つの中から選べ、というものだった。  2人のクラスメートが喧嘩をしていて、その仲介役が主人公だ。  ええと、要するに、ミヨがサナに仕返しをして、サナは怒ったけど、ミヨはもとはサナの所為だと言う。それを聞いたときの主人公の、ミヨに対する気持ちの部分が空欄になってるってことか。  ①私には関係ないよ  ②そんなのミヨが悪いに決まってるじゃん  ③これって、どっちが悪いの? 「・・・難題だね」 「でしょ?模範解答はどれ?」 「文脈的に③?」 「そうなの?そうなの?②じゃなくて?」 「正しいのは①と②だけど、文脈的に模範解答はおそらく③」 「・・・」  みかはしばらくワークの文章を睨んでいたが、納得がいかなかったらしく模範解答を開いた。 「本当に③だ。・・・なんで?なんで?ニニ」  知るか。自分で考えろ。 「ねえ、なんで?本当にわかんない」 「・・・・性格悪そうな選択肢から消去していって残ったもの」 「・・・・確かにそうかも」  納得した。適当に言ったのに。 「でも、③ってことはさ、主人公のアヤネってもしかして1人だけ5歳とかだったりする?」  知るかそんなこと。 「あ、ニニ、あとここも」 「自分でやれ」  どうせ模範解答見ても納得しないだろ。私が説明するだけ無駄だ。・・・まあ、私も私で適当なこと言ったけど。  と、みかは悲しそうにこっちを見た。 「ごめんなさい・・・」  自分ははっきり言う割に、繊細なんだよな・・・みかって。 「ごめんなさい・・・」 「そう思うなら自分で進めて」  だが、みかは不安なのかしきりに謝ってくる。 「怒ってる?ごめんね、ニニ」  勉強会が謝罪会になりかけている。みかにはこういう時、はっきり言わないと納得できないようだ。 「ねえ、ご 「ラファエラになりたいの?」 「あ、絶対嫌だ」  私もアガタになりたくねーよ。  英語のワークを指定のページまで終わらせたところで、12時のチャイムの音が聞こえてきた。 「そういえば、お腹が空いた」  結局こんな時間までいてしまった。 「ねえ、ご飯食べる?」 「・・・本当にいいの?」 「僕は食べて欲しいな。まだ暑い時間帯だし、それに、夏休み中ずっと1人でご飯は寂しい。あ、うどんとかあるよ?それと、お母さんがゼリー作ってくれたの。別にニニのことそんなに話したわけじゃないけど、暑いから冷たいもの用意してくれてるみたい」  うどんとゼリー、か・・・うん、入る。 「じゃあ、いただいていきます」 「やった!持ってくるね」  みかは勉強道具を片付けると、楽しそうにキッチンに行った。  出てきたのは、2人分のうどんと麺つゆと、それからカットされたキュウリに味噌が添えられたもの。あとは、手作りだというゼリー。  このゼリー、生の果物使ってない?私の苦手なピンクのさくらんぼが乗ってない・・・。なんか、凝ったもの用意してもらっちゃったな。  そういえば、人の家に来ることが久しぶりすぎて頭から抜けていたけど、こういう時って何かお土産を持ってくるべきだったのか。 「あ、お箸これ使って」  そして高そうな木製の艶のある箸が出てくる。 「それ、何かのお祝いでもらったらしいんだけど、1回も使ってないんだよね。ちょうどいいと思って。あ、もちろん洗ってあるよ」  ちょうどいい?今高いことが確定したよね?手ぶらで来た客にちょうどいいか? 「なんか・・・いろいろありがとう。私何も持ってきてないけど」 「え?僕が誘って来てもらったんだからいいんだよ」  でも何か・・・あ。 「みかって、美術館好きなんだっけ」 「うん!好き!海外の美術館も行ってみたいんだけど、お金も時間も無いからねー。この辺りの美術館も回ってみようと思ってる」  聞かなくても聞きたいことが出てきた。 「うちに、親の海外旅行の写真とか変な骨董品とかあるけど、来る?」  みかがキュウリを手にしたまま固まった。  午後の予定が決まったようだ。
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