祝・友達初訪問

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祝・友達初訪問

 食休みを兼ねて、涼しくなるのを待ってから、みかと一緒に我が家に移動した。  私はみかの家に既に来たことがあったけれど、みかが私の家に来るのは初めてだ。そもそもここ10年で業者以外に家に入った客はおそらく0だと思う。まあ、あの女が実は合鍵持ってて、入りはしたけど荒らしはしなかったっていう可能性もまだあるけど。 「なんかニニの家、周りの家よりひと回り大きくない?」 「・・・そうなの?」  玄関の前まで来ると、みかはまた驚いた様子で言った。 「え、あれプール?」 「そうだよ」  中学校はプールの授業が無い。我が家は玄関と駐車スペース以外はしっかり壁で囲まれている作りだから、今でも暑くなるとたまに使っている。これも、母親の希望でつくったらしい。 「僕、今までいろんなところで暮らしてきたけど、備え付けのプールがある家なんて初めて見た・・・」 「そうなんだ」  私も近所だと見かけたことがないけど、まさかそんなに珍しいとは。 「どうぞ入って」 「お邪魔します・・・」  他の人の家に全然行ったことがないから特に考えたことがなかったけれど、みかにとっては我が家はいろいろ珍しいようだ。 「中庭あるんだ」  人1人横になれない広さだけど。 「レコードプレイヤー・・・?」  最近は使ってない。 「ニニの家って、かくれんぼするのに良さそうだね。この壺とか、頑張れば入れそう」  みかは廊下に置かれた(ほぼ放置されている)鮮やかな絵が描かれた壺を指差した。  確か、中国で買ったとか言ってたな、それ。容量はともかく、入れるけど出られない形してる。 「リビングこっちね。ここで待ってて」 「ニニの家って、キッチンはリビングから離れてるんだ」 「うん、キッチンは反対側の部屋」  二階の物置部屋同然の「母親が使っていた部屋」に行って、わかりやすく「独身時代海外旅行」と書かれたアルバムを選んだ。中身が父親の映った写真だということを確認しておく。  あとは・・・なんだろう、この薄い箱。おそらく父親の手書きで、「ホフロマ塗り」と書かれた付箋が貼られている。  これでいいか。  とりあえずその2つを持って、リビングに戻った。  みかは興味津々な様子でカウンターのそばにいた。 「ここはキッチンじゃないの?」  確かに、料理道具がまるで見当たらないけれど、水道や食洗機は一応あるからキッチンに見えるかもしれない。 「・・・バーカウンター的なもの?」  正直、私も殆ど使わないからわからない。  昔母親の定位置だった場所だ。 「バーカウンター?・・・あ、奥の棚にあるのお酒か。あまりにもそれっぽくてレプリカ?かと思った」  そこら辺で見かけるお酒とは全然違うし、売ったら良い値がつきそう。 「はい、とりあえずアルバムとよくわかんない箱」  カウンターに置いて、2つだけある足の長い椅子の片方に私は座った。  みかも慣れない様子でジャンプするようにして座る。 「この箱は?」 「ホフロマ塗りだって」 「何それ。どこのもの?」 「さあ」  開けてみると、中には入っていたのはお皿のようなものだった。  ああ、「塗り」ってそういう「塗り」か。 「こういうの、漆器って言うんだっけ」 「そうだと思う」  特に説明書らしいものも無いので、夏休みで持ち帰っている、学校で配布されたタブレットで調べることにした。 「ロシアのホフロマ村で作られた漆器だって」 「へぇ、ロシアに旅行したことがあるんだ」  旅行・・・ 「さあ、どっちだろ」 「マトリョーシカもあったりする?僕、本物見たこと無い」 「あったけど、なんか開かなかった」 「え?開かずのマトリョーシカ?もう1つの・・・これは、アルバム?」  うん。  開いてみると、まず1ページ目に写真が1枚だけあった。その下に、やっぱり手書きで、メモが挟まれている。 『芸術巡り・フランス』  みかが好きそうなやつだな。
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