休み時間

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休み時間

 朝からよくわからないことがあったけど、休み時間はゆっくりできる・・・ 「ねえ、西谷さん」  わけでもなかった。 「外にいかないの?ミカ」 「うん。まだちゃんと話せてないし」  逆にクラスメート全員と、もうこれくらい話してるの? 「西谷さん、以外の呼び方したいな。何か呼んでほしいのとかある?ニニ、とか」 「別に」 「そっか・・・」  ミカは少し考え込んだ。  そして、純粋無垢な顔で言う。 「あ、タニシとか?」  ケンカ売ってんのか。  口に放り込むぞ。タニシを。  とりあえず近い言葉、で考えるな。 「うーん・・・。それか、シニタニ?」  なんだその死神みたいなあだ名。  どんなセンス? 「ニニが良い」  というか、それが一番マシだ。  ミカのネーミングセンスだと、控えめに言ってもっとおかしなものが出来上がりそうだ。  ミカは、紙一重で好かれそうだし嫌われそうな性格をしている・・・・気がする。 「で、下の名前は?」 「先生に聞いたら?」  生徒たちのこんな暗黙のルールなんて、教師に関係ない。聞けば確実に教えてもらえる。 「それは、酷いでしょ」  みかの顔が一気に険しくなった。 「僕は、ニニが名前を言いたくないってこと知ってる。知っているのに、それをするのは悪でしょ」  ・・・  少し、驚いた。  なんでもはっきり意思を伝える性格だってことは、なんとなく感じていた。  善悪を、特に「悪」を曖昧にする人間のなんと多いことか。  でも、みかはその境が、自分の中でちゃんと決まっているようだった。 「そっか」 「ニニが、僕に名前を言える時って来る?」 「さあ?付き合いの長さの問題じゃないからね」 「ふぅん・・・」  みかは納得したようだった。  他の子なら、この時点で「冷めた」って離れていくのに。  遠回しに、「仲良くなれると思うなよ」って言ってるようなものだから。 「ニニの好きな教科は?」 「歴史」 「なんで?」 「人の変な意思を感じるから。小説を読んでいるような。興味ないところだと全然覚えられないけどね」 「苦手な教科は?」 「国語。読書は好きだから読み取りはできるけど、記述は苦痛」 「一緒だ。どうしてこのような行動をしましたか?とか言われても、その行動をする理由は全く理解できない。模範解答見てもさっぱりだし」 「仕方ないから、そこは模範解答であろう内容を絞り出す」 「僕は思ったこと正直に書いちゃうよ」 「・・・何書くの」 「例えばさ、テストで、主人公がラファエラを許したのはどうしてですか?って問題があって」  何したんだ、ラファエラ。 「最後、主人公のアガタがラファエラを許したところで終わるんだ。これ絶対テストに出るよなーって思ってどうしてか考えたんだけど、やっぱりわからなくて。で、そのシーンは挿絵があったんだけど、アガタは後ろ姿で描かれていて、でも、許した人の感じはしないなって思って。両手が拳だったし」  絶対許してないね、それ。 「ラファエラのこと見放したんじゃない?」 「そう、そう書いた!曖昧な返事をされると、本当に許されてるか心配になって、その後何度も謝ってくる人っているでしょ?それをされるのが苦痛で、アガタはいっそ許して、その話題がもう出ないようにしたんじゃないかなって。そう書いたんだ。良くわかったね」  ・・・いや、そこまで書いたとは思ってなかった。 「でも、どっちかが遠くにでもいかない限り、ラファエラはアガタとこれまで通りの距離でいようとすると思うけど」  2人って多分、友達でしょ?もともとは。 「あ、アガタって引っ越しの予定があるんだよ」  引っ越すんかい。 「多分、新しい住所教えてないよ、アガタ。先生にどうしてこんな答え書いたんだって言われた時、僕、アガタは引っ越しを機にラファエラと完全に離れようとしていて、今回のトラブルでその決心が完全についたんだとおもいますって言った」  みかと話すの、思ったより面白いかもしれないな。  いい経験だと思っておこう。私と十分話しただろうし、あとは他の子とこういう会話を楽しんでくれ。 「ちなみに、そのトラブルって?」 「アガタの買ったばかりのお気に入りの本に、ラファエラが血で汚して、そのまま何も言わずに返したんだ。アガタは黙っていたけど、あとからラファエラがノリ半分で適当に謝ってきたからアガタに我慢の限界がきた」  うわ・・・    
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