苦手なご飯

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苦手なご飯

 翌日。  特に約束をしたわけでもないけれど、昨日別れた道の所で、丁度みかに会った。  昨日はたまたま早く来ていたのかと思ったが、普段からこの時間に家を出ているようだ。 「ニニと登校できるかなって」  私と会わなかったら1人で登校することになる。他の人と登校しなくていいのか。 「お母さん、いつも家出るの早いんだ。家に1人でいてもつまらない」  私は1人時間大好き。  珍しく小学生とすれ違った。  班ではなく、高学年の生徒2人。委員会か何かだろう。  私の姿を見ると、そそくさと小走りで去っていった。  多分、6年だよね。私のことをよく知っているはずだ。  みかの方を見ると・・・何故か、ちょっと傷ついた顔をしている。  ・・・なんで?  私が小学生にも嫌われているところを、目の当たりにしたからだろうか。  なんでそれでみかが傷ついた顔をしているのか、さっぱりわからないけど。 「・・・ニニは、大丈夫?」 「私には日常」 「そうなんだろうけど、そうじゃなくて、」  ? 「傷ついてるっていうより、その、顔色が悪いような気がする」  ・・・顔色?  私の? 「さっきから思ってたんだけど、・・・うん、やっぱり悪いよ。体調どう?」  そこまで気にすることなのか。  だけど、少し心当たりはある。  どうりで朝食が喉を通らないと思った。いや、いつものことだけど。  何が食べられるかわからなくて、牛乳にひたしたシリアルを食べてみたら吐いてしまい、なんとか食パン一枚、口に無理矢理つめて来た。それも吐き出しそうになったけど、そこは堪えて。  正直なところ、喋りながら歩いていると口から全部出てくるんじゃないかと思う。  ・・・まあ、その話はこれくらいにして。 「少し気持ち悪いくらい。外の空気吸ってれば治る」 「・・・なら良いんだけど。昨日の給食も、食べるの辛そうだったよね」  そんなところまで見ていたのか。 「豚肉のかけらと睨み合ってたでしょ?」  うん・・・まあね・・・あんかけとのダブルパンチ・・・ 「今日は揚げパンだっけ?」  げっ。  その場で袋に入れられるアレ・・・テカテカで、砂糖の粒が大量の・・・ 「ニニ、昨日より辛そうな顔してる」  したくもなる。  他の、特に女子は嫌がるだろうけど、せめて、ココアであることを願おう。きな粉は気持ち悪さが倍増する。 「・・・みかは、苦手な食べ物あるの?」 「うーん」  悩むってことは、それほど無いってことか。 「・・・ドリアンとパクチーかな?」  絶対に給食に出ないでしょ、それ。  確かに私も好きじゃないけど。   「揚げパン、今日はココアかー」 「きな粉の方が良いよね。あんま汚れないし」  そんなことを話す給食当番の女子を横目に、私は少しだけホッとしていた。 「うわ、海藻サラダか」 「ソレはフツーに嫌い」  よし、揚げパン一口食べたら海藻サラダを一口。不人気だから、多分おかわりできる。  できたら2対1で食べていきたいところだが、私の胃袋はそんなに受け付けない。  かと言って、残したくもない。 「ワンタンスープは良くない?」 「まあ美味しいよね」  いや、それはよくない。あの微妙に入った肉は苦手だ。  まあ、何を言おうが食べるしかないわけで。   「・・・ニニ、大丈夫?」  休み時間、水筒片手に机に突っ伏している私を、みかが覗き込んできた。 「油と牛乳にやられた」  牛乳は、駄目だ。飲める時は流し込むのに使えるが、今日は朝の時点で飲めなかった。 「ワンタンとも睨み合ってなかった?」 「あの中身嫌い」  水があって少し助かった。 「家までもつかな」  すっかり軽くなった水筒を振ると、朝はいっぱいでしなかった音がチャポチャポ聞こえる。 「飲み足りないの?」 「水単体じゃ油に勝てない」  だけど、私は胃薬も吐いた人間。気持ち悪くなったら、ひたすら水を飲んでスッキリさせて、あとは治るまで耐えるしかない。 「保健室行く?」 「行かない。外の音がうるさい」  保健室は静かだけど、校庭に面しているからか、外のはしゃぎ声や廊下の話し声がよく聞こえる。  それより、みかは今日も教室にいるのか。 「外で遊ばないの?」 「ニニが辛そうなのに?」 「・・・」  みかがいた所で治るわけでもない。でも、それを言うのは流石に意地悪だと思ってやめた。 「水、足しに行く?」 「学校の水は美味しくない」  ここまで言うと、流石に面倒くさいと思われたかな。  私がいつも飲む水は、家の一階の水道の水。二階のだと甘すぎる。ペットボトルの天然水は後味が苦手だ。  前は、こんなことはなかったのに。 「・・・家来る?」  ん? 「もう暑くなってきたし、あと授業2時間、ホームルーム三十分、帰る時間は・・・」 「三十分かな」  んで、家?  家に来るか、だって? 「うん、やっぱり僕の家の方が近い。その体調で、家までもつ?」 「量を調整すれば」 「駄目倒れる。僕の家、昨日別れた所から5分もしないから」  思ったより近いな。 「下校中の寄り道って、多分駄目なんだろうけど、そんなこと言ってる場合じゃ無さそうだし」 「いや、」 「駄目」  え。拒否権無し?    
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