春恋色

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「これ…」 桜のトンネルに向かう夏原に、思い切って声をかけた。 「え」 「さっきの風で飛んできたやつ」 「あーあ、かわいそうだね」 「だから夏原、使ってやって…」 「ん、使う?」 「女子たちみんな、落ちた桜耳に挿してる」 夏原は周りを見回して「本当だ」と呟いて笑った。 「…じゃ、うん。貰うね」 そう言って夏原は俺の手から桜を取って右耳に挿した。 「どうかな、落ちないかな?」 「見てみる?」 俺は夏原に携帯を向けてシャッターを切った。 「え、ちょ…不意打ち‼︎絶対変な顔した」 「大丈夫、綺麗に撮れてる」 画面を夏原に向けて見せると、画像を欲しいと言ってきた。 密かに保存しようと思っていた夏原の写真を堂々と保存した後、『夏原亜希』へLINEを送った。 「ありがとう」 そう言って夏原は、桜のトンネルに向かって駆け出した。俺は新しい繋がりにニヤニヤしそうな顔を必死に堪えながら恋色の背景に向いた夏原の後ろ姿にシャッターを切った。 この画像を送る時、どんな言葉を添えようか? END
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