見つけたよ、君を

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「もとが極悪人でも人間に戻りますよ。しかし、人間に戻す前に『魔物』であった時に行った悪さと、人間であった時に行った悪さを魔法によりチェックします。法で裁く必要があればそこは然るべき機関に引き渡します」  サラサラの黒髪の、エリートと称されるその研究員は人当たりのよい笑顔で答える。  案内した獄所で研究員は捕らえた『魔物』をひとりひとり確認し、その『魔物』に適した薬を別室にて調合し、与えていく。  その薬の材料や製法は企業秘密だという。 「ぅぐ・あ・あああ…あぁ……」  薬を服用し苦しむ『魔物』の身体から浄化された瘴気の蒸気が立ち込める。  獣のように鋭い牙や爪が嗅がれ落ち、しばらくするとまだ成人にもなっていないような男が現れた。 「あぁ…ぼ、僕は何という事を……!」男が頭を抱え、崩れ込む。 「どうか忘れてください。貴方が『魔物』である間に行った所業はのせいなのです。記憶があるという事は辛いですが、乗り越えてもらうしかないのです」  研究員は男の肩を叩き、次の『魔物』の元へ急ぐ。 「アンタの帰りを待っているやつがきっといるよ。覚えているんだろう?早く帰ってやらないとな」  項垂れる男を小隊長のひとりが励まし、衣類を渡す。  獄所の管理人が次々に『魔物』を研究員に案内し、研究員は人間に戻していく。 「あの、最後に案内させていただく『魔物』は……その、大物でして…」
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