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小さな疑問
「佐伯さん、彼女できたんすか。いいっすね」
食堂でナツキの手作り弁当を食べていたら、後輩にそう言われてしまった。
「……まあ」
「いかにも女の子の作りそうな弁当だ。母ちゃんのと全然違いますね〜。いいなぁ」
「そんなの分かるの?」
「いや。なんとなくですけど。否定しないって事は合ってたんすね」
……誘導尋問かよ。この後輩クンは食わせ者で有名なヤツだからなぁ。
「彼女どんな子なんですか?」
「え……。可愛いよ」
「え? 佐伯さんの彼女なのに?」
……おい、ちょっと待て。何だそれ。
「……地味にディスってきたよね?」
「すいません、動揺しました。超羨ましくて。俺なんか推しのVTuberに投げ銭すんのが関の山なのに、佐伯さんは彼女に弁当作って貰ってるとか……。住んでる世界線が断絶してるっていうか……」
大袈裟な……。ちゃんと結婚してる先輩達だっているのに。
「ボクもVTuberに投げ銭する仲間だと思ってた?」
「投げ銭はともかく、推し位はいるかと……。リアルにいたら要らないっすね」
「……そうだね。帰ったら彼女のご飯食べて、一緒にテレビ見てそれで一日が終わるよ」
「それ、世の中の独身男の夢じゃないすか。それにしても彼女ちゃん、料理上手すぎですね。弁当超綺麗だ」
「……そう、かな」
……それは僕も思っていた。あの子はまだ高校生の女の子なのに、家事に慣れすぎているのだ。
料理の手際もいいし、散らかってた部屋もあっという間に片付けてくれて。
彼女が来てから、部屋も綺麗だし、ご飯も美味しい。
だから、深く考えなかった。
でも……。
あの子は……一体何なんだろう?
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