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置き配
生活必需品は勿論ボクが買ってるけど、ナツキ自身に必要な物ってないんだろうか?
そう心配になり、買い物ついでに彼女に聞いてみた。
「ナツキにお小遣い渡さなくて平気なの? 女の子は色々と必要な物があるんでしょ? 妹がいるから、その程度は分かるんだよ?」
口に出しては言えないが、生理用品とかだってタダじゃないんだし。
「……え〜。平気、だよ。家に置いてくれてるだけでも、助かるからさ。お小遣いとかいいよ。あ、それともHの回数が足んない感じ?」
「!! 違うよ! 何でそっちになる訳!? 女の子は身だしなみ整えるにも、お金かかるんじゃないの? ってことだってば!」
それじゃガチのパパ活だろ。あっけらかんと何を言い出すんだか。
最近の若い子の発想には、ついていけないよ……。
「……ヒロトは本当に優しいよね。ああいうお家で育ったからかな……」
?? 『ああいうお家?』
「ナツキはボクの家なんか知らないじゃん」
「……いや。野菜たくさん送ってくるお母さんのいる家、って意味」
「……ありがた迷惑ってのもあるんだよ。ボクには料理するスキルも時間もない。可燃ごみの袋を買って、食べきれないモンは捨てなきゃならない。親戚達にも心の中で詫びながらさ」
うちの実家はそこそこ田舎で、農家をやっている。
親父は割と進歩的な考えの人だったから、ボクには好きな事をしろと言って、家業を継いでくれとは言わなかった。
母親は地元を離れて欲しくなかったみたいだが、同時に諦めてもいた。
なにしろ田舎だから、ボクのやりたいIT関連の仕事なんか、どこにも無かったからだ。
その寂しさの為か、母親は二~三週間に一回程度、近所の親戚やうちで作った野菜と保存食が、たんまり入ったダンボールを送ってくる。
築四十年超の安アパートに宅配ボックスなんか無いから、毎度置き配にしてもらってるけど……。
「土日には、時間指定で肉とか魚まで来るもんね」
「さすがに置き配でいいです、って訳にもいかないじゃん……。クール便はさ」
「お母さん達、ヒロトが心配なんだね」
「……エナジードリンクの飲み比べしてる息子だからね。心配にもなるのかも」
さすがに身体に悪いかと、最近は控えてるけど、あれ飲むと疲れもどうにかなっちゃうからなあ。
「……私がいる限りは、野菜も肉も魚も無駄にしないよ。今日は餃子パーティです」
「二人なのに、パーティなんだ」
「会社の人とか友達呼んでもいいんだよ?」
……君の事を何と言って紹介しろと?
『彼女』にしては若すぎるんだってば。
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