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5階建てのビルの3階に、海外製のキャストドールやグッズを扱うドールショップ・La vie en roseと言う店が在る。
建物自体はこじんまりとしていて、所狭しと品物が陳列されていて、ドア付近と奥には即納ドール、試着出来る机と椅子と撮影ブースが在り、周りには小物やドールバッグなども陳列されている。
店の名前は【La vie en rose《ラヴィアンローズ》】フランス語で『薔薇色の人生』と言う意味だ。
店員は勤務年数ごとに薔薇のバッジの色が違う。
3年目からバッジが支給され、最初は水色。
5年目なら緑色になり、8年目はピンク色のバッジで、それ以上なら赤になる。
店員は皆、『スーツに縦半分に割った髑髏の片方を顔に着けている。』と言う、少しホラーでダークな装いをしている。
閉店時間間際…と、言う事もあり、客は少ない。
中断していた在庫確認の後、スタッフルームに戻ると、ショーケースに居たドール達が出て来る。
気に入られ、買われて行った筈の、完成されたドール達。
造形が美しい…だけに、デスクに揃うと、まさにファンタジー世界みたいだ。
スタッフルームへと戻った店員は、デスクに乗っているドールに話し掛ける。
そのドール達は⎯⎯。
買われて行った筈の完成品。
しかしみな、何故か血まみれだ。
「やれやれ。
何で君たちはそんな事するんだろうね」
店員は呆れた表情で、溜め息混じりに言い放つ。
「君たち手入れするの、大変なんだよ?」
呆れながらぼやくが、ドールが好きなので苦ではない。
長い時間が掛かってしまったが、全て綺麗に洗い終わり、全てのパーツを戻すと、ショーケースに飾る。
彼は猪狩 陽臥、8年以上勤めるベテラン店員。
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