契約者……1

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「あなたが本当に、その相手を殺したいと思うなら、その黒いリボンを引けば良い。 そうすれば黒い薔薇があなたの恨みを晴らしてくれる……。 受け取った時点で僕との契約が成立し、一度契約してしまえば、解除する事は出来ない」 「解除すると…どうなるんだ?」 目の前の、黒魔術師に恐る恐る尋ねると、淡々とした声で答える。 「一度契約すると、途中で破棄する事が出来ない。 薔薇を破壊しようものなら、『契約違反』とみなされ、依頼人が殺される。 それに、黒い薔薇を受け取った依頼人は、受け取った時点で契約を交わした事になって、死後、黄泉の世界へ逝く事を決定付けられてしまう」 淡々とした声で説明され、黒魔術師と、彼が手にしている黒い薔薇を見て迷う。 「思い止まるなら今のうち」 「恨み……晴らしてください……。」 決意を固め、黒魔術師から薔薇を受け取ると、焼ける様な痛みと熱さがして、 左手の甲を見てみると⎯⎯黒い薔薇の烙印(焼き印)が刻まれている。 「それは僕との契約の証。 だけどその証は契約した者しか見る事は出来ない。 本当に、後悔しない? 黒い薔薇を受け取れば、もう…引き返せなくなる」 左手の甲の烙印を見て、もう引き返せない……そう、決意を改めて、黒魔術師に話す。 「良いんだ、あんな奴…死んで当然……悲しむ奴なんて居ない……彼奴なんて、大嫌いだ」 「分かった……あなたの恨み……晴らします」 それだけ告げると、青年は元の場所に戻される。 「夢…だったのか?」 そう呟いて左手の甲を見る。 「夢じゃない……本当に……本当にあるんだ」 黒い薔薇を手に決意に満ちた表情で、父親に復讐する。
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