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「皆川くん、これを棚に並べてくれないか?」
中年男性の店員が、黒葉にお菓子が入ったコンテナを手渡す。
「はい、分かりました」
淡々とした声で最低限の礼儀と返事をしてコンテナを運ぶ。
中年男性の店員は、黒葉が先程まで居たレジに立つ。
「いらっしゃいませ」
ここぞとばかりに、にこやかに愛想を振り撒く。
「(接客ってのは、こうやるんだよ)」
ニヤリとイヤらしい目で黒葉を見てはニヤニヤ笑っている。
どうやら中年男性の店員は、先輩風を吹かせたいらしい。
──昼休み。
バックヤードに戻った黒葉は、お弁当を1人離れた場所で食べている。
「La vie en rose……強い恨みを持つ者だけがアクセス出来るスマホアプリ──」
愛用のスマホには、様々なアイコンが並んでいるが、その中でも一際目を惹くのが、黒い薔薇のアイコン。
──それがLa vie en roseだ。
「復讐代行の──」
小さく呟き、電源を消す。
──夕方、バイトが終わって、駐輪場に止めたバイクに跨って自宅まで走る。
自宅に帰り、ガレージにバイクを入れる。
「…ただいま」
"おかえり”
……なんて、聞こえるはずもない。
母親は男と浮気して蒸発。
2つ上の姉は父の虐待に耐えきれず、家を出て行った。
黒葉自身も家を出たいが、1人暮らしするだけの貯金が無いので、まだ実家暮らしだ。
「また酒呑んでるのか」
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