契約者……1

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「皆川くん、これを棚に並べてくれないか?」 中年男性の店員が、黒葉にお菓子が入ったコンテナを手渡す。 「はい、分かりました」 淡々とした声で最低限の礼儀と返事をしてコンテナを運ぶ。 中年男性の店員は、黒葉が先程まで居たレジに立つ。 「いらっしゃいませ」 ここぞとばかりに、にこやかに愛想を振り撒く。 「(接客ってのは、こうやるんだよ)」 ニヤリとイヤらしい目で黒葉を見てはニヤニヤ笑っている。 どうやら中年男性の店員は、先輩風を吹かせたいらしい。 ──昼休み。 バックヤードに戻った黒葉は、お弁当を1人離れた場所で食べている。 「La vie en rose……強い恨みを持つ者だけがアクセス出来るスマホアプリ──」 愛用のスマホには、様々なアイコンが並んでいるが、その中でも一際目を惹くのが、黒い薔薇のアイコン。 ──それがLa vie en roseだ。 「復讐代行の──」 小さく呟き、電源を消す。 ──夕方、バイトが終わって、駐輪場に止めたバイクに跨って自宅まで走る。 自宅に帰り、ガレージにバイクを入れる。 「…ただいま」 "おかえり” ……なんて、聞こえるはずもない。 母親は男と浮気して蒸発。 2つ上の姉は父の虐待に耐えきれず、家を出て行った。 黒葉自身も家を出たいが、1人暮らしするだけの貯金が無いので、まだ実家暮らしだ。 「また酒呑んでるのか」
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