私の彼は・・・

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 七重(ななえ)はマシューとの同棲生活を楽しんでいた。マシューは数年前から交際していて、ようやく一緒に暮らすようになった。すでに互いの家族も了承していて、結婚も近いだろうと2人とも思っていた。 「ただいまー」  マシューが仕事から帰ってきた。七重はすでに夕方に帰っていて、晩ごはんを作っている。今日はマシューの大好きなハンバーグだ。愛情を込めて作ろう。 「おかえりー」 「今日はハンバーグか」  マシューはにおいだけで今日がハンバーグだとわかったようだ。七重は笑みを浮かべた。明日は休みだから、今週の仕事を頑張ったマシューのために奮発してみた。 「うん」  ハンバーグだとわかって、マシューは喜んだ。 「おいしそうだなー」 「そう? ありがとう」  マシューはリビングでぐったりした。今週の仕事の疲れが出ているようだ。疲れたけど、ハンバーグを食べて、元気を出してほしいな。 「はぁ、今日も疲れたな」 「そう?」  七重は心配そうだ。マシューの身に何かがあったら心配だ。これから幸せになろうというのに。 「うん。今日はやらかしちゃってね。色々と大変だったんだよ」 「そう。でも明日は休みだから、ゆっくり休んで、また来週から頑張ってね」  七重は励まそうとしている。 「ああ。週末は一緒にどこかに行きたいよ」 「本当?」 「うん」  と、七重は何かに気が付いた。中指にささくれができているのだ。仕事から帰って来た時にはなかったのに。 「あっ!」 「どうしたの?」  マシューは七重の表情が気になった。指に何かがあったんだろうか? 「ささくれができてるの」 「本当?」 「うん」  七重はマシューに、ささくれを見せた。確かにそれはささくれだ。  七重はささくれをむこうとした。ささくれを見たら、むこうとしてしまうのは本能のようだ。 「いたっ・・・」  だが、七重はむきすぎて、血を出してしまった。どうしよう。 「どうしたの?」  その声に気が付いて、マシューは七重の元にやって来た。 「むきすぎて血が・・・」 「大丈夫?」  マシューは心配そうな表情を見せた。大丈夫だろうか? 「何とか」  そろそろハンバーグができる頃だ。電子レンジで中まで火を通していたが、アラームが鳴った。 「さてと、晩ごはんにしよう」 「うん」  七重は出来上がったハンバーグを皿に盛った。これで今日の晩ごはんの準備ができた。それを見て、マシューがやって来た。 「いただきまーす」 「いただきまーす」  2人は晩ごはんを食べ始めた。食卓には、瓶ビールもある。明日は休みだ。ビールを飲んで疲れを取ろう。 「おいしい!」  マシューは喜んだ。やっぱり七重の作るハンバーグはおいしいな。疲れが一気に吹っ飛ぶよ。 「本当? ありがとう。マシューのために頑張ったのよ」 「ありがとう」  マシューは以前から考えていた。明日はデートだ。東京ディズニーリゾートに行こう。 「明日のデート、楽しみだね」 「うん」  食べ終わった七重は、リビングでぐったりしていた。七重も、今週の仕事を終えて、疲れ切っているようだ。お互い疲れているようだ。だけど、明日は休みだ。デートで疲れを取ろう。  ふと、マシューは七重を見た。すると、七重は寝ている。疲れて、寝てしまったんだろう。 「あれ? 疲れて寝ちゃったのか?」  と、マシューは七重の傷が気になった。何とかしたいな。だけど、どうしよう。 「あっ、そうだ!」  マシューは何かに気が付いた。マシューの顔がだんだん変わってき、ドラゴンになった。 「グルルル・・・」  マシューは七重の傷口をなめた。すると、傷口は何もなかったかのようにきれいになった。それを見て、マシューは元の姿に戻った。 「よし、治った」  それから数分後、七重は目を覚ました。まだ寝る時間じゃないのに、起きてしまった。 「あれ?」 「ちょっと寝てしまっていたんだ」  マシューは笑みを浮かべた。マシューは何もなかったかのような表情だ。 「そっか。ごめんごめん」 「いいよ。疲れたんでしょ?」 「うん」  と、七重は気づいた。ささくれのできた部分が全く痛くない。七重は中指を見た。だが、ささくれなんてなかったかのようにきれいだ。 「あれっ?」 「どうしたの?」 「ささくれが治ってる」  マシューは喜んだ。自分が治したんだが、喜んでもらえただろうか? 「本当だ。どうしてだろう」 「フフフ・・・」  と、七重はマシューの背中に羽が見えた。錯覚だろうか? それとも、本物だろうか? 「えっ!?」 「いや、何でもないよ」  七重は焦っている。マシューは笑みを浮かべている。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加