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「まさか、ついて来たの?」
先に声を発したのは葵だ。
「未練がましいな」
敬太が同調する様に言った。
「ーー理央、お客さんの邪魔になるからこっちに来い」
出入り口の前で井戸の神が手招きしていた。
「おい、あの人は?」
それには答えずに、「お幸せにね」とだけ言って私は笑った。
背中に怪訝そうな二人の視線を感じながら、胸を張って歩く。出入り口にはもう井戸の神はいなかった。
廊下へ出て、フロントを過ぎるとレストランから良い匂いがして来た。途端にお腹がぐうと鳴る。
「ーーお腹すいた」
デトックスしたんだから、美味しい料理を食べられる分だけ、楽しんで食べよう。
そうやって、生きていけばいつかまた会えるかもしれない。そして、妖怪の仲間になれたら最高なのだけど。
おわり
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