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「ぬっぺらぽうの目を直接見て、正気でいられる人間がいるのならお目にかかりたい。私はまっぴら御免だけど」
「へ、へえ」
「ぬっぺらぽうが恋のフェアリーというのも解せぬ。何なら、私の方が相応しいのに」
鬼女は歯を食いしばった。
「苧(お)うにさんの糸で作ったミサンガはよく切れるって評判だもんね」
よく切れるミサンガが、耐久性に問題があるわけではなく、願いがすぐ叶うっていう意味なら私も欲しい。
「ぬっぺらぽうは滅多に姿を現さない妖怪と定評があるからね。評価は妥当だと思うわ」
丸顔の子狸が偉そうに言った。
「あっ、アンタまた大人の会話に勝手に入って」
子狸はフンと鼻を鳴らしてシャワー台に座った。
「可愛いじゃないですか、ぬいぐるみみたいで」
「二足歩行する子狸がその辺の狸と同じだと思ったら痛い目見るわよ」
とは言え、泡でもこもこになった子狸はただただ可愛い。
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