井戸神さまの思し召し

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「お待たせしましたーーえ?」  作業着姿のやけにこざっぱりとした青年がくるりと振り向いた。 「よう、いい顔になったな」 「あの、あなたは?」  カプリが横でプッと吹き出す。 「井戸の神も若返りの湯に入ったのよ」 「えー!」 「ちょっとだけな」 「いえ、だいぶお若く見えますが」 「そうか?」  生えていた無精髭も無くなり、肌艶も良い。 「ちょっと、うたた寝したせいだな」 「風呂場で寝るのは危険なんじゃ……」 「神だから大丈夫だ。じゃあ、行くとするか」 「あの、カプリさん、ありがとう」 「私みたいに殴っちゃダメよ」  カプリは笑って手を振った。  風がビューッと吹いて、私の身体は井戸の中へと吸い込まれた。 「修羅場になるかは娘さん次第だな」 「え?」  井戸の神の声で目を開けると、敬太と葵が動揺した様子で立っていた。
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