2人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女――麗子は小弥太宛てに、近況や思いの丈を毎回違う便せんで綴ってくる。
その色味。模様。手触り。一度だって同じだったことはなく、いつも選び方のセンスが絶妙で。
デザイナー志望というだけあって、自分で描いたイラストも添えられ、それがまたどれだけ神経を使っているんだろう、と驚く繊細さ。春なら桜の花びら一つ一つの薄ピンクのにじみ、明るい空色との対比。夏の暑さや秋の寂しさ、冬の冷えた空気感なども伝わってくる。
その便せんの折り方がまた可愛らしい動物だったり楽器だったりといつも凝っていて。
封筒も既定の長方形ではなく繊細な雪結晶やリボンに切り抜いた形で、ハンドメイドの良さを実感させてくれるのだ。
小弥太の方はそんな細やかな手作業もアイディアも絵心もない。ぶっきらぼうな白の便せんに封筒だけれど、せめてとぎっしり文字を詰め込んだ。
「いつもありがとう」「丁寧なお手紙、いたみいります」「お返事遅くなってすみません」など、もらう側の礼をしっかり込めて。
でも、そういった「送信分」もまず自宅のポストに置いておく仕組み。文字の密度が高いと紙は変形し膨らんで嵩を取り、ますます「受信分」の空間を圧迫する。郵便屋さんは週1回しか来ないので、「送受信分」両方が溜まる。
で、詰まる。
そうすると警告が。「入らない分は廃棄となりますので、『整理』お願いします」と。
今回でもう3度目だ。3度でイエローカード、4度目以降は本当に廃棄されるからリーチだ。
警告が入るだけ親切なのかとも思うが。
詰まらないようにするための、郵便屋さんからのアドバイスレターも入っていて。これがまたツヤツヤの分厚い上質の紙なので、詰まる要因の一つじゃないのかよ……とちょっぴり不満も感じる。
最初のコメントを投稿しよう!