お手紙ありがとう

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「まいどっ!」  郵便屋さんと目が合って、お互い手を挙げて挨拶する。  手紙の整理は人間関係の整理ですよ。  小弥太にそう言ったのは、この兄ちゃんだ。  切る相手の人数をなるたけ少なくしたいのなら、誰を選ぶか。  麗子を選んだのは、最も容量を食う相手だったからだ。詰まりを解消するならそれが一番――というのは表向きの理由。  本当はもうウンザリだった。あんな弟を丸投げしてくる無神経さ。日に十数回の頻度にエスカレートした、どうでもいい薄い内容の手紙。  けれど、切るのは厄介だ。小弥太と麗子はもうすっかり「恋人」であって、一方的に切れば間違いなく不誠実だという認定が一般的だろう。けれどまだ「恋人未満」の甘い言葉や初々しさやサプライズを要求してくる彼女には疲弊するばかりだった。  そうして小弥太は、麗子側のポストを詰まらせる作戦に出たのだ。郵便屋さんのアドバイスに従って。  小弥太から強引に切れば騒がれる。でも、彼女のプライドさえ保てたら? つまり、彼女に「彼女から切った」と思わせる。  手紙でもメールでも同じだ。なぜか先に出した方が立ち位置が下。切るのも同じ。先に切った方が「フった」ということで目線が上なのだ。  が、小弥太は、小弥太がそうさせたのだという優越感、つまり自分の方がその上をいったことに満足していた。
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