12

2/10
前へ
/287ページ
次へ
凪子が物思いに耽りながらうっとりとその指輪を見つめていると、 品の良い50代位の女性スタッフが近づいて来て言った。 「そのルビーの指輪は、とても高品質な石が使われているんですよ」 女性はそう言って、ショーケースの中から指輪を取り出す。 そして、黒いベルベッドのトレーの上に指輪を置いた。 凪子は間近でまじまじと見る。 店員が言う通り、エタニティリングの小さい石にしては とても輝きが強い。 女性スタッフの言う通り、質の良い石を使っているのだろう。 「はめてみてもいいですか?」 「もちろんです。どうぞお手に取ってみて下さい」 女性はにこやかに言う。 凪子はその指輪を指にはめてみた。 「まあ! サイズがぴったりでございますね!」 女性の言葉に凪子も頷く。 あまりにもぴったりで思わず笑みがこぼれる。 それから凪子はさりげなく値段をチェックした。 値札を見ると24万9000円だった。 凪子は独身時代、いつも新しい事にチャレンジしたり 何かの勝負をする時には、 いつもお守り代わりに新しいジュエリーを買っていた。 当時はまだ20代で給料も今ほど高くはなかったので、 もちろんこれよりもリーズナブルなものばかりだ。 それと比べると少し高いような気がする。 その時スタッフが言った。 「ルビーは勝負に強い石と言われているんです。だから身に着けるとお守り代わりになるとも言われているんですよ」 その『お守り』というフレーズに凪子は反応する。 そしてなぜかその指輪との出会いに運命的なものを感じた。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7322人が本棚に入れています
本棚に追加