3人が本棚に入れています
本棚に追加
31
箱の中に入っていたのは、小さめのノートのようなものだった。
紙の質感が、あまり触れたことのない感じがする。
ノートを開いてみた。しかし、書いてある文字らしきものは、どれも見覚えすらないもので、全く読めない。
せっかく苦労して箱を開けたが、あまり面白いものではない……。
「あー! ここにあったか!」
ふと声がして、部屋のドアのほうを見ると、
「探してたんだよ! それ、俺のなんだ。
こないだお前んちに遊びに行ったとき、忘れちまったんだな」
さらっと上がり込んだキミの親友が、キミがノートを持っているのを見て、冷や汗をかいていた。
「な、中身見たのか?」
見たけれど、何が書いてあるかさっぱりわからなかったと、キミは伝えた。
「だよな!?
実はそれ、その、俺の日記帳でさ……。
万が一誰かに見られたら恥ずかしいから、読めないように暗号で書いて、この箱――びっくり箱のなかに入れて、保管してたんだよ」
胸をなでおろす親友。
それは、勝手に開けてしまって悪いことをしたな、と思ったキミ。ノートを箱に入れ直し、親友に返す。
親友は箱を受け取ると、正面についている黒い小さな丸に触れた。
「ついこっちの言葉の設定にしちまってたみたいだな。これで心配ない、と」
ぼそっとつぶやく親友。一体なんのことだろう?
キミが疑問に思っていると、親友ははっと顔をあげた。
「じゃ、じゃあ、サンキューな。
俺、このあと用事あるから帰るわ」
早口でいった親友は、そそくさと帰っていった。
キミは、手を振って見送る。
見送りながら、キミは考える。
そんなに見られたくない日記帳なら、どうして家に遊びに来るときに持ってきたのだろう? それも、びっくり箱ごと。
……びっくり箱? あれはどちらかというと、からくり箱なんじゃないか?
キミが読めなかった文字。あれは本当に、暗号だったのだろうか――?
びっくり箱――改めからくり箱には、いろいろな仕掛けがあった。
ときにはそう、現代の地球の科学技術を超越するような仕掛けが――。
変な汗がキミの頬をつたうが、わからないことをこれ以上考えても仕方がない。
キミはベッドに寝転がり、スマホを手に取って動画サイトを開いた。
〈Fin〉
あとがき → 32へ
https://estar.jp/novels/26211200/viewer?page=32
最初のコメントを投稿しよう!