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 箱の中に入っていたのは、小さめのノートのようなものだった。  紙の質感が、あまり触れたことのない感じがする。  ノートを開いてみた。しかし、書いてある文字らしきものは、どれも見覚えすらないもので、全く読めない。  せっかく苦労して箱を開けたが、あまり面白いものではない……。 「あー! ここにあったか!」  ふと声がして、部屋のドアのほうを見ると、 「探してたんだよ! それ、俺のなんだ。  こないだお前んちに遊びに行ったとき、忘れちまったんだな」  さらっと上がり込んだキミの親友が、キミがノートを持っているのを見て、冷や汗をかいていた。 「な、中身見たのか?」  見たけれど、何が書いてあるかさっぱりわからなかったと、キミは伝えた。 「だよな!?  実はそれ、その、俺の日記帳でさ……。  万が一誰かに見られたら恥ずかしいから、読めないように暗号で書いて、この箱――びっくり箱のなかに入れて、保管してたんだよ」  胸をなでおろす親友。  それは、勝手に開けてしまって悪いことをしたな、と思ったキミ。ノートを箱に入れ直し、親友に返す。  親友は箱を受け取ると、正面についている黒い小さな丸に触れた。 「ついの設定にしちまってたみたいだな。これで心配ない、と」  ぼそっとつぶやく親友。一体なんのことだろう?  キミが疑問に思っていると、親友ははっと顔をあげた。 「じゃ、じゃあ、サンキューな。  俺、このあと用事あるから帰るわ」  早口でいった親友は、そそくさと帰っていった。  キミは、手を振って見送る。  見送りながら、キミは考える。  そんなに見られたくない日記帳なら、どうして家に遊びに来るときに持ってきたのだろう? それも、びっくり箱ごと。  ……びっくり箱? あれはどちらかというと、からくり箱なんじゃないか?  キミが読めなかった文字。あれは本当に、暗号だったのだろうか――?  びっくり箱――改めからくり箱には、いろいろな仕掛けがあった。  ときにはそう、現代の地球の科学技術を超越(ちょうえつ)するような仕掛けが――。  変な汗がキミの(ほほ)をつたうが、わからないことをこれ以上考えても仕方がない。  キミはベッドに寝転がり、スマホを手に取って動画サイトを開いた。 〈Fin〉  あとがき → 32へ  https://estar.jp/novels/26211200/viewer?page=32
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